2022.02.08IP カナダ:メタバースでのブランド構築
カナダ:メタバースでのブランド構築
Facebookがその社名を「メタ(Meta)」へと変更すると発表したことで、「メタバース(Metaverse)」への関心が高まった。
メタバースの概念はまだ進化しているが、一般的には利用者が相互に持続的に活動できるインターネット上の仮想空間のことであり、メタバースでのブランド構築の機会も増えている。
この新しい環境は、消費者との関係を仮想空間にまで広げようとするブランドオーナーにとって、「挑戦」と「好機」の双方をもたらすであろう。
例えば、メタバースで自社の商標を宣伝しようとする者は、仮想ビルボード、仮想イベントの開催、さらには消費者が仮想提供物を探索できる仮想「モール」など、様々な手段で販売促進活動を行う事ができる。
実際、一部のブランドオーナーは、分散型ゲームアプリケーションや、非代替性トークン(Non-Fungible Token(以下、NFT)技術を使用した独占的なバーチャル衣料品の販売などを通じて、すでにメタバースで消費者と積極的に関わっている。
■メタバースとは?
メタバースとは、持続的な仮想空間のことで、物理的な世界と並行した「場所(place)」であり、拡張現実(AR)、仮想現実(VAR)、3Dアバター、ビデオ、その他のコミュニケーション手段が組み込まれており、人々がデジタル世界の中で「生きて」おり、他の人とリアルタイムに交流することを可能にするものである。
メタバースは、個人が仕事や遊びのためにオンラインで集まり、コンサートや会議から世界各地へのバーチャル旅行まで、友人や家族、同僚とのつながりを保つことができる機会を提供する。
■ブランドはどのようにメタバースに関わっているか
ブランドオーナーがメタバースで消費者と関わりを持つ最初の方法は、オンラインゲームやデジタルマーケットを通じて、希少価値のあるデジタル版の商品や「限定版」を提供することだった。
例えば、ルイ・ヴィトン社の「Louis the Game」では、NFTとしてゲームに組み込まれたバーチャルなルイ・ヴィトンのプリントや色彩を使って、プレイヤーが自分のアバターをカスタマイズすることができる。
また、ドルチェ&ガッバーナは、NFTを使ったデジタルのブランドラインをメタバース限定で展開している。
ブランドのファンには、IRL(リアル)展示会でウェアラブルの物理的な形に触れることができる特典もあり、ブランドのデジタルグッズと物理的なグッズのユニークな統合を実現している。
また、ブランドオーナーは、メタバースのような既存のオンラインプラットフォームとコラボレーションし、デジタル限定のアイテムをリリースすることで、デジタルに精通した若い消費者層へのアプローチを可能にしている。
例えば、グッチは最近、人気のオンラインゲーム「Roblox」とコラボレーションし、プレイヤーにデジタル限定バージョンのグッチ・ディオニソスバッグを獲得する機会を提供した。
驚くべきことに、このデジタルバージョンのバッグは、Robloxの市場で4,100ドル以上で再販売され、物理的なGucci Dionysusバッグの価格を超えてしまった。
■メタバースにおけるブランド保護と権利行使
上述のように、メタバースでのマーケティング活動がうまくいけば、(特に技術に精通した若い消費者の)ブランドロイヤリティが高まり、デジタル商品とIRL(現実世界(real-world))商品の双方の売上が増加する可能性がある。
しかし、より多くのブランドオーナーが、デジタル商品やサービスをメタバースで提供するようになると、必然的に商標権侵害や模倣品が発生する。
侵害の正確な形態を予測することは困難であるため、ブランドオーナーにとっては、メタバースにまで及ぶ強制力のある商標保護を確保することが重要となる。
バーチャル商品やサービスの商標権を確保していないブランドオーナーは、メタバースでの侵害対策や効果的な権利行使が困難になるであろう。
前向きなブランドオーナーの中には、オンライン仮想世界で使用するダウンロード可能な仮想商品、仮想商品を扱う小売店、デジタルコレクションサービスの提供など、メタバースに関連する商品や役務について商標を申請し、すでに対策を講じている人もいる。
メタバースにおけるブランド保護の例としては、以下のようなものがある。
ナイキは最近、NIKE(出願番号97095855)、JUST DO IT(出願番号97096236)、AIR JORDANロゴ(出願番号97096945)など、同社を象徴するブランドについて、メタバース関連の商品や役務を指定し米国特許商標庁に商標を出願し、話題となった。
また、コンバースは、よく知られているALL STAR CHUCK TAYLORロゴ(出願番号97107382)などの著名な商標について、バーチャル商品やサービスの商標保護を得るために複数の出願を行っている。
アバクロンビー&フィッチは、鳥とヘラジカのシルエットデザイン(出願番号 97106352 および 97106342)について、バーチャル商品を対象とする商標出願を行っている。
■結論
メタバースは、デジタル商品やバーチャル商品、サービスを利用して、新たな需要者層の獲得やブランドロイヤリティの向上を目指すブランドオーナーに、課題と機会を提供する。
より多くのブランドオーナーがメタバースで商品やサービスを提供するようになると、避けられない侵害に対抗するために、バーチャル商品やサービスの商標保護を確実に行うことがますます重要になるであろう。
[出典:Smart & Biggar]