2022.11.08IP台湾:アプリを通じて動画のリンクを提供する行為が幇助犯を構成するとの判決
台湾:アプリを通じて動画のリンクを提供する行為が幇助犯を構成するとの判決
インターネットの発展・普及に伴い、動画を鑑賞する手段はテレビからインターネット上の動画配信プラットフォーム(YouTube、DailyMotionなど)へと移行しており、消費者はスマートフォンを通じて各業者の提供するアプリをダウンロードすることで、いつでも簡単に話題の映画やドラマを見ることができるようになった。
しかし、仮に業者がアプリを通じて提供する動画が他人の著作権を侵害する場合、当該業者の責任をどのように認定すべきだろうか。
知的財産及び商事裁判所は、近年、110年度刑智上易字第46号事件において、業者が、動画鑑賞のために、アプリを通じて収集した第三者のウェブサイトのリンクを提供する行為に対し、判断を下した。
本件の被告である欧酷インターネット株式会社(以下「欧酷社」という。)が開発したアプリ「電視連続劇2」は、プログラムにより第三者のウェブサイト上の動画リンクを自動的に収集し、ユーザーは検索する時間をかけることなく、当該リンクを通じて外部のウェブサイト上の動画を鑑賞することができる。
告訴人である車庫娯楽株式会社(以下「車庫社」という。)は、欧酷社の設計したプログラムは車庫社のライセンスを受けずにアップロードされた映画を含む第三者のウェブサイトのリンクをアプリ上のプレイリストに加えて、ユーザーに当該ウェブサイト上の動画を鑑賞させており、当該行為は車庫社の公衆送信権を侵害していると主張した。
これに対し、裁判所は、以下の理由で、欧酷社のハイパーリンクを提供する行為は公衆送信権の侵害には当たらないとした。
ハイパーリンクは、外部に既に存在している、不特定の大衆が著作内容を閲覧する手段を提供するものでしかなく、本件について言えば、事実上、大衆に向けて車庫社のライセンスを受けていない映画を提供しているのは当該映画を動画配信プラットフォームにアップロードした者であり、ハイパーリンクを提供した欧酷社ではない。
そのため、単にハイパーリンクを提供する行為そのものは、「公開送信」には当たらない。さらに、欧酷社が第三者のウェブサイトにおいて動画を違法アップロードした者と事前に共謀したことを示す証拠は無いため、欧酷社と当該動画を違法アップロードした者が公衆送信権の侵害にかかる共同正犯を構成するとは認められない。
以上のとおり、裁判所は、欧酷社がハイパーリンクを提供した行為は公衆送信にはあたらず、共同正犯は成立しないとしたが、以下の理由により、欧酷社の行為は幇助犯にあたると判示した。
1 欧酷社がリンクを収集した第三者のウェブサイトには多数のライセンスを受けていない動画が配信されており、自動的に収集した第三者のウェブサイトのリンクに他人が違法にアップロードした動画が含まれている可能性が極めて高いという事実について、欧酷社は明確に知らないとしても、未必の故意がある。
2 本件において、欧酷社がアプリを通じて、ユーザーに車庫社の公衆送信権を侵害する動画を含むウェブページのリンクを提供し、より多くの者に違法アップロードされた動画を閲覧させたことは、車庫社の公衆送信権の損害の拡大に寄与しており、客観的にみて、侵害の幇助行為にあたる。
また、欧酷社は自らが著作権法90条の8に規定する「検索サービスプロバイダ」であり、免責されると抗弁したが、裁判所は、著作権法の「検索サービスプロバイダ」はユーザーにインターネット上の情報に関する索引、参考又はリンクの検索又はリンクサービスを提供する者であるところ、欧酷社が開発したアプリは、主にインターネット上の動画のリンクを整理するようにデザインされており、プログラムにより自動的に動画配信プラットフォーム上の動画のリンクを収集し、それらをアプリ上のリストに加え、ユーザーの閲覧に供するものであるから、インターネットから動画リンク以外の情報を検索する機能は無く、自由にインターネット上の資料を検索できる一般の検索エンジンとは大きく異なるとして、欧酷社は上記の規定に定める「検索サービスプロバイダ」には該当しないと認定した。
結果、欧酷社は、車庫社の公衆送信権の侵害を幇助したと判示された。
上記判決から、アプリを通じてリンクを整理することで、他人の動画検索の便に供する事業者は、著作権法に規定する「検索サービスプロバイダ」にはあたらず、さらに、客観的にリンク先のウェブサイトに他人の著作権を侵害する内容を含む可能性が極めて高いことを示す証拠があり、かつ、自ら収集した動画リンクに違法な動画リンクが含まれる可能性が極めて高いことを予見できる場合、そのような動画リンクを第三者の閲覧に供する事業者には、幇助犯の成立の可能性がある。
よって、類似する技術により動画を提供するインターネット事業者は、その内容の合法性について留意すべきである。
[出典:Saint Island International Patent & Law Offices]