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2022.11.22IP中国:北京市高級人民法院(高等裁判所)が“Milan”(ミラノ)の中国語表記の商標登録を認める


中国:北京市高級人民法院(高等裁判所)が“Milan”(ミラノ)の中国語表記の商標登録を認める

はじめに
中国商標法第十条(二)では、公衆に知られた外国の地理的名称は、他の意味を持たない限り商標として使用できないとしている。
2021年11月12日、北京市高級人民法院(高等裁判所)は、イタリアの有名な都市の地名である“Milan”(ミラノ)の中国語表記に当たる“米兰”の商標登録に対する無効審決を棄却した。
最高人民法院は、本件を2021年の年間知的財産模範訴訟50選の1つとして選出している。

経緯 
Jiangxi Milan氏は、中国における結婚式の写真撮影業界の第一人者である。
1986年に“米兰”というブランド名でウェディングドレスの販売を始め、1996年に同音異義語の名称の写真スタジオを開いた。
1999年に、初めて“写真撮(photograph shooting)”を指定する、図1の(中国語繁体字で“Milan”を表す)文字の商標登録を得た。


図1:Jiangxi Milan氏の最初の登録商標

Jiangxi Milan氏は、第41類において簡体字版の“米兰”(ピンイン:mi lan)(無効対象の商標)を2010年に出願し、2012年に登録を得ている。

2019年に、第三者の個人が当該商標に対して、イタリアの有名な地理的名称であり、中国商標法第十条(二)で定められている絶対的事由に反するとして、登録無効審判を請求した。
2020年10月29日に、中国国家知識産権局(CNIPA)がこの請求を支持し、当該商標の登録は無効となった。
その後の行政訴訟において、2021年6月24日に北京知的財産権裁判所もCNIPAの無効審決を支持し、権利者のJiangxi Milan氏は、北京市高級人民法院(高等裁判所)へ上訴した。

判決
北京市高級人民法院(高等裁判所)は中国国家知識産権局(CNIPA)の決定を覆した。
商標法第十条(二)の立法目的には、次の2点がある:
・公衆の地理的名称に対する表現の自由と公共資源(public resources)に対する独占を禁止すること
・公衆間の混同および誤認を避けること

また、地理的名称は商標が下記のように「他の意味」を持つことを前提に登録可能である:
・地理的名称を示す以外に、別の固有の意味を持つ
・使用を通して、関連する公衆に周知されている二次的意味を獲得している

原告は、無効対象の商標は中国のアグライア・オドラータ(樹蘭)という花についても言及すると主張した。
これに対し、裁判所は中国の公衆の間では、無効対象の商標はイタリアの都市名としての方がより良く知られていることは否定できないと判断し、その主張は認めなかった。

しかし、Jiangxi Milan氏が提出した、中国における事業規模、優秀な経済実績、継続的な広告および宣伝キャンペーン、様々な行政および司法当局による当該商標の知名度に関する証拠資料により、権利者と当該商標の間には安定的な関連性があり、商標が(地理的名称以外の)二次的意味を継続的な使用を通して獲得していることが十分裏付けられた。
裁判所はさらにJiangxi Milan氏は当該商標の出願あるいは実際の使用において、イタリアの都市に便乗する意図はなかったと結論付けている。

よって、裁判所は主要役務である“photographic reporting services; photography; microfilming; recording of video tapes; production of video tapes; rental of stage scenery; production of shows; digitalising films”に関しては登録を維持した。
一方で、役務“translation; rental of cinematographic cameras”については、二次的意味が確立されている証拠がないとして、登録を無効と判断した。

出典元代理人コメント
本件は、中国において地理的名称を含む商標を出願する際の参考となるであろう。
弁理士は、このような商標の登録可能性を評価する際に、北京市高級人民法院が提示した次のパラメーターを参考にすることができる:
・公衆による商標の「その他の固有の意味」の周知度が地理的名称表示と同等あるいはそれ以上である場合、その本質的な識別性を証明する証拠を提出できれば商標は登録可能である。
・公衆による商標の「その他の固有の意味」の周知度が地理的名称表示よりも著しく低い場合、継続的な使用を通して獲得された二次的意味があり、出所表示機能を果たすのであれば、登録可能である。

実際には、CNIPAは審査において地理的名称から成るあるいは地理的名称を含む商標出願を拒絶する傾向がある。
ブランドオーナーは、中国でこのような商標を出願する前に現地の弁理士に確認することが推奨される。
登録を確保できた場合、商標の実際の使用においては特に注意を払い、商標と地理的名称との間に不当な関連性や出所の混同を生じさせないよう意識的に距離を置くことが勧められる。


[出典:Wanhuida Intellectual Property]


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