2023.05.23IPタンザニア:Wilmar Resources Pte Ltd V Tiffany & Co. 事件(周知商標)
タンザニア:Wilmar Resources Pte Ltd V Tiffany & Co. 事件(周知商標)
Wilmer Resources Pte Limited(以下「出願人」と称する)はシンガポールで設立された会社であり、タンザニアにおいて商標「TIFFANY」の第3類および第5類への登録を求めて2件の商標出願を行った。
この商標出願に対し、高級ジュエリーと特選品を扱うデザインハウスTiffany & Co.(以下「異議申立人」と称する)が異議を申し立てた。
手続の効率化のため、2件の出願に対する2件の異議申立は併合されることとなった。
異議申立人は周知商標である商標「TIFFANY」の所有権を主張した。
異議申立人は世界各地の160の法域において当該商標を登録しており、これまで180年にわたって当該商標を世界中で使用してきたが、タンザニアでは使用されていなかった。
出願人Wilmar社の商標出願は1986年商標・役務商標法(以下「商標法」と称する)の様々な規定に違反している、と異議申立人は主張している。
異議申立人が特に問題にしたのは、商標法第19条の(a)~(d)、2003年公正競争法、パリ条約第6条の2およびTRIPS協定である。
だが異議申立人は、「TIFFANY」商標の先使用、すなわち出願人がタンザニアで「TIFFANY」の商標を出願した日以前に異議申立人が当該商標を先に使用していたことを示す証拠や、先行商標に関わる自らの権利を示す証拠を、異議申立書の中で開示していなかった。
そこで出願人は商標の属地性を援用し、南アフリカの判例(Victoria’s Secret Inc. v Edgars Stores Ltd (428/92) (1994) ZASCA 43))を引用した。
この判例は、商標が法的効力を有するのは当該商標が使用・登録されている地域の域内に限定されるという判断を示している。
この異議申立の審問を担当した副登録官は、パリ条約およびTRIPS協定に基づく周知商標の保護に関する国際的な基準を引用し、ある商標が周知であるか否かを判定する際に考慮すべき重要な要素として、公衆における商標の知識・認識の程度、使用期間および使用の地理的範囲、広告・宣伝、登録、模倣者に対する商標防衛の努力、商標の価値といったファクターを挙げている。
審問官による商標法第19条(d)の解釈は、周知商標は単に国際的に周知であるだけでなくタンザニアにおいて周知でなければならない、というものであった。
「TIFFANYがタンザニアの国外で周知商標であるという事実に疑問の余地はない。
だが、タンザニアの市場セグメント、特に第3類および第5類に該当する商品が取引される市場セグメントにおいてTIFFANYの商標が単体で周知であることを裏付ける証拠は、あまり見いだせなかった」と副登録官は述べている。
副登録官はさらに続けて、「商標が周知であるか否かの地域的な判断基準は、国内で周知であることを要求するとともに、出願の時点だけでなく当該商標の登録可能性が判断された時点においても周知であったことを要求している」と述べた。
以上の要素を考量した上で、副登録官は、第3類(洗浄剤、化粧品等)と第5類(薬剤等)に属する商品に関して言えば、TIFFANYの商標はタンザニアでは周知ではないとの判断を示した。
それゆえ、今回の異議申立は却下され、結果的に出願人の商標出願はタンザニアにおいて登録が認められることとなった。
この事案は、商標権に関する限り、アフリカの多くの登録機関の現状を雄弁に物語るものである。
タンザニアは本質的には先願主義の法域であるため、周知商標の権利者は、自らがそのような法域において商標の保護を求めていることを肝に銘じておくべきである。
[出典:Adams & Adams]