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2024.02.06IPロシア:危機下における商標権の管理について


ロシア:危機下における商標権の管理について

■ロシアにおける商標権に関する現状
・相当数の外国企業がロシアからの撤退を宣言、ロシアでの事業を清算し、ロシア事業の再編成を行っている。
・ロシア政府はロシア市場から撤退した外国企業の商標に関する製品の並行輸入を許可している。
その認可はロシア産業貿易省によって行われる。外国企業がロシアへの出荷を再開した場合、関連製品が(並行輸入が許可されている製品の)リストから削除されることがある。
・外国商標に関する不正使用や悪意のある商標出願が増加している。

■ロシアにおける係争に関する現状
・外国企業による知的財産権の行使に対するロシア裁判所の姿勢は変わっていない。
つまり、ロシア国外の請求人がロシア国内の知的財産権侵害者に対して知的財産権侵害訴訟を提起し、勝訴することは引き続き可能である。
・ロシア国内の被請求人は、ロシア国外の請求人の居住/出所国について政治的な論述を用いる傾向があり、裁判官に対していわゆる“非友好的な”国の外国企業の知的財産権保護を拒否するよう求めることが多くなっている。
しかしながら、このような論述を裁判所が重視することはなく、あくまで事実関係に基づき、法に従い係争案件は審理される。

■不使用取消訴訟に関する現状
・商標は使用されなければならないという一般的な法的義務は従来通り変わらない。
ロシアでは3年間の不使用猶予期間が認められている。
コロナウイルスやウクライナ情勢に関するロシアの現状は、本不使用猶予期間に影響を与えず、引き続き商標が3年間使用されない場合、利害関係者は当局に商標の不使用取消を請求する権利を有する。
・現状のロシアにおける不使用取消に対する保護戦略としては、①過去の出荷実績の証拠保全、②戦略的な再出願、③ユーラシア経済連合の国経由でのロシアへの製品流通、が考えられる。

①過去の出荷例の証拠保全について:
過去の出荷例を示す書類として認められうるものは、過去にロシアに輸入された製品の税関申告書、代理店との契約書や出荷書類、消費者への製品の販売が確認できる書類などである。
ロシア知的財産裁判所は、商標権者(または商標権者が許諾した会社)とロシア国内の消費者を結ぶ一連のつながりが確認できるような使用証拠を要求する。
なお、これらの使用証拠は不使用取消請求以前の3年間に該当するものでなければならない。

②戦略的な再出願について:
(ロシアからの事業退などで)直近3年間の使用を示す証拠がない場合、再出願を行うのが不使用取消請求に対する唯一の対抗手段であると考えられる。
ただし、ロシアでは二重登録(同一出願人による同一指定商品役務の同一商標登録)が不可であることから、再出願商標の態様や指定商品役務に変更を加える必要がある点に留意されたい。


[出典:Melling, Voitishkin & Partners]


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