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2024.05.28IP台湾:改正商標法が2024年5月1日に施行


台湾:改正商標法が2024年5月1日に施行

2024年5月、商標法の改正案が台湾の立法院で可決された。
当該改正案には多くの重要な変更が含まれており、知的財産局は、改正法の促進・実施に合わせて、外部による検討のために多くの行政命令の草案も発表していた。
本改正法と関連行政命令は2024年5月1日に正式に施行された。
以下に改正法のポイントと関連行政命令の規定を紹介する。

1. 商標代理人の資格の新設
改正前は、台湾に住所を有しない出願人が代理人に委任しなければならないことを除いては、誰でも商標登録出願や関連手続きの代理をすることができていた。
商標代理業務の専門能力の認定および登録管理制度を推進し、代理人情報の透明性を高め、出願人や商標権者の権益を保護するために、今回の改正では商標代理人の資格が新設された。
適格な代理人は、商標代理人と法により商標代理業務を行うことができる国家資格保有者(即ち、弁護士と会計士)の2種類に限定される。

商標代理人登録をするには、商標専門能力認定試験に合格するか、一定期間の商標審査業務経験が必要である。
当該試験の内容には検索・分析、登録出願実務、紛争実務、関連法規が含まれ、年1回実施される。
また、既に商標の実務に従事している者の権益に影響を与えないために、新法施行前3年間に年間10件以上の商標登録出願や手続きを行った者は、施行後1年以内に商標代理人登録を申請することができる。
商標代理人の登録及び管理に関する規則ではさらに、知的財産局で10年以上の商標審査実務経験を有する審査官は、商標代理人登録を申請できると規定している。

2. 加速審査制度(早期審査制度)の導入
電子出願の利用促進のため、知的財産局は2020年から電子出願による登録出願にはすべてファストトラック審査を適用している。
しかし、現在の電子出願比率は既に90%を超えており、審査期間短縮の効果がなくなっている。
知的財産局が公布した最新の統計データによると、2023年の一次審査意見通知までの平均期間は6.2ヶ月、権利化までの平均期間は7.5ヶ月で、2022年の統計データより1ヶ月長くなっており、今後新規登録出願の件数の増加に伴い、審査官の人数が増えなければ、審査時間がもっと長くなると予想される。
そのため、諸外国の制度や、出願人が権利を迅速に取得する必要性を考慮し、今回の法改正で有料の加速審査制度が導入された。

商標法施行規則の関連規定及び商標登録出願の加速審査作業手続によると、以下の対象1と対象2のいずれかに該当する商標登録出願が加速審査の対象となる。

・対象1:全ての指定商品・指定役務について、出願商標を既に使用している又は使用の準備を相当程度進めている案件

未使用または準備ができていない商品・役務を含んでいる場合、商品・役務の分割・減縮を行う必要がある。
「使用の準備を相当程度進めている」については、個別の出願ごとに判断されるが、商標を付した商品・役務の見本、印刷・販促物の注文書、広告契約書、事業計画書等の具体的な証拠を提出しなければならない。

・対象2:一部の指定商品・指定役務についてのみ、出願商標を既に使用している又は使用の準備を相当程度進めていて、かつ、商業上の権利主張の必要性と緊急性を要する案件

「商業上の権利主張の必要性と緊急性を要する」とは、以下のいずれかの状況をいう。

A. 第三者が出願商標を無断で使用している、または使用の準備を相当程度進めている
B. 出願人が、出願商標の使用について第三者から権利侵害の警告を受けている
C. 出願商標について第三者から使用許諾を求められている
D. 出願商標の市場の参入を計画しており、協力会社との間で販売・流通契約を締結している
E. 出願商標を展示会に出展する予定があり、主催者と関連契約を締結している
F. その他の商業上の必要性と緊急性を証明できる状況

一出願多区分の出願で条件を満たさない区分は、分割または減縮を行う必要がある。
また、加速審査の申請後、区分ごとに6,000台湾ドルの手数料を納付しないと審査手続きは開始されない。
書類に不備がある場合、知的財産局は出願後10営業日以内に出願人に補正を求める通知をする。
書類に不備がない場合、知的財産局は出願の審査手続を進め、2ヶ月以内に一次審査意見通知書または登録査定を発行し、拒絶理由への応答の提出後15営業日以内に査定書を作成する。
以下の図は加速審査制度のフローチャートである。


 

3. 出願人適格の拡大
従来、非法人団体は実体法上の権利能力を持たないが、手続法上では当事者適格を有する。
つまり、非法人団体は商標登録の出願人適格を有していないのに、商標法の保護対象であった。
非法人団体が市場で自らの名称で取引する必要があることを考慮して、今回の改正では、出願人適格がパートナーシップの組織(例えば、法律事務所、建築士事務所)、法に基づき設立登記された非法人団体、商業登記法により登記された個人・パートナーシップ企業まで拡大された。
さらに商標法施行規則では、これら出願人は関連情報と登記文書を提出することが義務付けられている。


4. その他の商標法施行細則のポイント
(1) 商標登録出願は実際の使用を前提としないが、使用する意図のない出願は産業の健全な発展を阻害する可能性があり、特に他者の市場参入の排除や不当な競争を助長することを目的とした出願は、商標法の立法目的に反する。
そのため、施行細則では、商標出願人に指定商品・指定役務において使用する意図があることを求めており、必要に応じて証拠の提出を求められる場合がある。

(2) 出願後の出願人変更や商標権移転登録は、権利の承継人が行わなければならないと明確に規定された。

(3) 商標登録出願の審査における第三者情報提供については、2019年公布された商標登録出願における第三者情報提供に関する作業要点の規定を施行規則に盛り込んで、第三者が提供した情報を採用する場合に、出願人の手続き上の権利を保護するために、出願人に一定期間内に応答する機会を与えなければ、その情報を拒絶理由の根拠とすることができないと規定された。
また、第三者には情報提供が受理された後の当該情報の処理状況及び審査結果は通知されない。


[出典:Tsai Lee & Chen Patent Attorneys & Attorneys at Law]


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