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2024.06.11IP中国:英語の造語商標の登録可能性について


中国:英語の造語商標の登録可能性について

 様々な商標が出願される中、中国での英語による造語商標の登録可能性について説明する。

 まず、造語商標とは一般的に主観的な意図に基づいて新たに作り出された語彙を指す。

造語商標の構成方法は主に以下5つである。

  1. 短縮法:一部英文字を略す、または連語の主要語彙の頭文字のみをつなげる
  2. 組み合わせ法:2つ以上の語彙を変えないまま一定の順序で配列
  3. 綴り合せ法:2つの語彙の接頭辞・中部・接尾辞を取捨選択
  4. スペル変形法:記述性質の一般用語を採用し、同時に語彙のスペルを変更
  5. 接辞法:接頭辞又は接尾辞を語根に付記

上記の方法で作成された造語は特定の意味を有しないため、商標登録をする場合、いかなる商品役務とも関連せず、理論的にはすべての商品役務において識別力を有する。
しかし、中国においては「チングリッシュ(Chinglish)」の視点から造語を作成する必要があり、実際に識別力欠如・品質誤認を理由とした拒絶査定を受けるケースは多々ある。以下一例である。

上記例はいずれも、英語部分はフォント・文字サイズが同じであり複数の英文字により構成されている。

各英文字間にスペースの挿入又は頭文字を大文字にするといった表記を採用していないことから、商標が2つに分割されることを意図していない。

いずれも全体でみると一体化し分割できない用語に見受けられ、辞書にも該当の用語は存在しないため確かに造語である。しかし、これらは審査官によって自発的に単語を分割され、各要素の意味を組み合わせて理解されたうえ登録可能性の有無を判断された。

審査基準においては、現地弁護士より以下のように分析されている。

中国一般消費者の認識レベルはいまだに「チングリッシュ(Chinglish)」にとどまっている。
これは中国語の考え方のまま英語を理解し、受け入れ、伝えることを指す。
つまり、中国一般消費者は英語の造語に対し、それが造語なのか特定の意味を有する英語表現なのか正しく区別することができない。
そのため、英語の観点からみると造語である表記も「チングリッシュ(Chinglish)」では考慮されない。

つまり、中国では英語の造語商標の登録可能性を、中国消費者の英語に対する理解度・中国語式スペル・閲読の習慣等を基に判断しているといえる。
そして、識別力欠如および品質誤認を理由に登録を拒絶された場合は拒絶不服審判、審決取消訴訟において拒絶が解消されるハードルはやや高いと予想される。
以上を踏まえ、中国で英語の造語商標を出願する際は、以下の点に考慮することが推奨される。

・商標作成者は組み合わせ法以外の4つの方法を優先的に採用し、語彙を創造したうえ、「チングリッシュ(Chinglish)」の視点からその意味を考慮する。
・組み合わせ法を採用したい場合は、指定商品役務の原材料・機能・用途に関連性のある語彙を使用を避け、要素の組み合わせにより悪影響があるか否かという点を留意する。


[出典:Lee International IP & Law]


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