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2024.06.25IPシンガポール:科学的用語の略称に関する登録可能性の判断


シンガポール:科学的用語の略称に関する登録可能性の判断

ライフサイエンス系企業2社により出願された「immunopotentiator from Pantoea agglomerans 1」の略称である「IP-PA1」が商標登録出願された。

■要約

文字商標「IP-PA1」は第3類の指定商品について出願された。「IP-PA1」は、Pantoea agglomerans 1というバクテリアから分離抽出された特殊な多糖体「immunopotentiator from Pantoea agglomerans 1」の略称である。
シンガポール当局(IPOS)は「IP-PA1」が本成分を含む商品について記述的であり、よって識別力に欠けるとして本願を拒絶した。
このことは、その化合物を最初に分離抽出したのが出願人自身であるにしても、またその言葉が専門家の間に限り知られているとしても、変わらないと当局は判断した。

2024年5月13日、IPOSはBioMedical Research Group Inc. とMacrophi Inc.の出願について審決理由を公表した。
本件は、科学的用語の略称に関する商標の登録可能性に関する実務上重要なケースであるといえる。

■背景
日本企業であるBioMedical Research Group Inc. とMacrophi Inc.の2社(以下:出願人)は、第3類について「IP-PA1」(出願番号:40202112183R)の商標(以下:当該商標)を出願した。
指定商品はnon-medicated toiletry preparations; bath preparations, not for medical purposesである。

「IP-PA1」は「immunopotentiator from Pantoea agglomerans 1」の略語である。
「immunopotentiator」は「immune(免疫)」と「potentiate(増強する)」を組み合わせた造語であり、これは身体の免疫反応を増強することを意味しており、「Pantoea agglomerans」はバクテリアの一種である。
数字の「1」は、このバクテリアの特定の株(IG1や1と示される)のことであり、小麦などの植物に含まれている。

■出願からの経緯
審査報告(局指令)が3回にわたってなされたが、審査官は、本願は記述的であり識別力に欠けるとして本願の拒絶理由を維持した。
特に審査官は以下の点について指摘した:
・本願は、指定商品がIP-PA1を含むことを伝えるのみに過ぎず、識別力が欠如している。
・研究者の間でIP-PA1の応用方法についてかなり注目されており、研究者は本願を出所表示ではなく、記述的な用語として認識するであろう。
・第3類の商品に関連する取引業者は、製品に含まれる主要な有効成分を製品上で強調するのが一般的である。
 したがって、本願は単にその成分が含まれていることの説明程度にしか消費者に認識されないと考えられる。
出願人の反論により審査官の判断が覆ることはなかったため、出願人は本願の第3類について当局のヒアリング(Ex Parte Hearing)を要求した。

■決定
登録官はシンガポール商標法の識別力欠如に関する第7条(1)(b)および記述的な商標に関する同条(1)(c)に基づき本願の登録を拒絶した。
記述性について、登録官は以下のようにコメントし本願を拒絶した:
・この理由に基づく拒絶は、商品又は役務の如何にかかわらずあらゆる特徴についてであると解釈することができ、その特徴が商業的にどれほど重要であるかは問わない。
つまり、問題となる標章又は表示が商品又は役務の特徴を示すために使用され得るものと考えられるだけで(拒絶理由として)十分である。
・一般消費者がIP-PA1の意味を知っているかどうかは問題にはならない。
また、IP-PA1の認知が専門家に限られていることも問題ではない。
なぜなら、IP-PA1の成分を含む製品を販売する誠実な業者は、IP-PA1の意味と効能を消費者に伝えることについて既得権益を持っていると考えられ、誠実な業者がIP-PA1の使用について権利侵害の可能性を恐れるようなことはあってはならない。
・本件は、乳児用粉ミルク等を指定商品とする文字商標「H-MO」の商標出願に対する拒絶理由と類似している。
「H-MO」は記述的であり識別性がないと判断された。


■重要なポイント
出願人が最初にIP-PA1を分離抽出したとしても、必ずしもその成分についての商標権が認められるわけではないことが本件からわかる。

結局のところ、商標権は知的財産を保護するための方法の一つに過ぎない。登録官が指摘しているように、「知的財産の保護は、必然的に商標登録の外になければならない」のだ。

出願人はIP-PA1の抽出プロセスについて特許申請するなど、別の種類の知的財産による保護を求めることができたと考えられる。

また、用語IP-PA1が広く記述的に使用されるようになる前に、より早い段階で商標権による保護を図れば、より良い結果が得られた可能性がある。

さらに、出願人がIP-PA1を商業的に利用しておらず、商標として使用していなかったことは、出願人の主張に不利になった。
商業的/商標的な理由がなかったため、本願が長期間の使用の結果として識別力を獲得したという主張を出願人は行うことができなかった。
また、商業的/商標的な理由がなかったことは、IP-PA1という語が一般消費者に出所識別するような標識として認識されることはないだろうという登録官の見解を補強することにつながってしまった。


[出典:Baker McKenzie]


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