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2026.07.07IP中国:商標法改正(2027年1月1日施行)


中国:商標法改正(2027年1月1日施行)

改正された『中華人民共和国商標法』は2026年6月26日に全国人民代表大会常務委員会にて可決され、2027年1月1日より施行される。
新たな改正案は、2023年1月の国家知識産権局が公表した意見募集稿に比べると、計101条から計87条に削減されたものの、改正前の2019年商標法の73条と比較すると依然として大幅に増加している。
内容面において、従前に論争を招いた重複出願禁止規定、悪意による抜け駆け登録商標の無効宣告後の民事賠償及び強制移転に係る規則はいずれも立法に至らなかった。
全体の改正方針は全面的な再構築から的確な規制へと転換し、現在の商標権化プロセス、権利保護、管理分野における顕著な課題に焦点を定め、制度改正の方向性が一層慎重かつ実務本位となっている。

注目すべき新改正案のポイント

1.登録商標の誤導的使用に対する取り締まりを強化

新『商標法』の第56条では、「公衆を誤認させる方法で登録商標を使用した場合、行政機関は期限を定めて是正を命じ、併せて違法経営額の5倍以下の過料を科することができ、違法経営額がない場合には、25万元以下の過料を科することができる。
期限通りに是正しない場合には、その登録商標を取り消すことができる」と規定されている。
新法では、このような登録商標の誤導的使用行為に対し、商標権侵害行為の取り締まりと同等の最も厳格な基準を適用し(登録商標詐称行為に対する処罰よりも重い)、更に適時是正を行わない場合、商標登録が取り消される重大な結果に至るものとする。
改正案において商標登録取消しには「情状が重大である」という限定要件が設けられていたが、最終版にて当該要件が削除されており、立法機関がいわゆる商標の誤導的使用に対し厳しく取り締まる強い姿勢が示されている。
第84条も併せて改正が行われ、「公職者が、職権を濫用し、職務を怠り、情実にとらわれて不正行為を行い、登録要件を満たさない商標に対し登録を認め、悪影響を生じさせた場合、法により処分を与える」と規定されている。
本改正により、行政機関内部における責任追及の仕組みが法的に体系化され、審査官による不確実性を伴う絶対的拒絶理由案件の審査負担が増大し、今後絶対的拒絶理由による拒絶率が一層上昇する見込みである。

2.悪意的商標出願人及びその代理人に対する懲罰措置を一層強化

第54条では、登録禁止・使用禁止条項違反、使用を目的としない出願行為、他人の先行権益に対する悪意的抜け駆け登録行為の三種類の悪意的登録行為を詳細に列挙し、悪影響を及ぼした場合、悪意的登録の直接的な出願人に対しより厳格な行政処罰(最高過料10万元)を科す旨と規定されている。
第67条についても併せて改正が行われ、「悪影響を及ぼした際に、悪意的登録行為を故意に代理した商標代理機関(最高過料20万元)並びにその主管者及び直接責任者(最高過料10万元)に対する行政処罰責任を加重する」と規定されている。
上記改正により悪意的登録行為の類型が明確に示され、違法コストが大幅に引き上げられたことで、商標の悪意的登録による混乱状況の抑止に重要な効果を発揮する。
しかし悪意的登録行為は態様が複雑で境界が曖昧である上、「悪影響を及ぼす」に関する明確な認定基準が存在しないため、市場事業者及び代理機関は執行に関する不確実性のリスクに直面し、正常な商標登録秩序の安定化に支障をきたすおそれがある。
今後の関連施行条例において本条項の適用事例を詳細化し、処罰の有無並びに軽重処罰の適用境界を明確に定める点を特に注視する必要がある。

3.先行権利の存否等を確定する事件の停止に関するルールを現行法の記載に回帰させ、司法手続きにおける事情変更の適用余地を確保

第41条は、改正案に定められた「審査審理手続きは原則として中止すべき」という厳格な規定を廃止し、現行法の「停止することができる」という裁量的基準に戻した上、手続き中止の適用範囲を商標異議申立、拒絶査定不服審判、無効審判などの各手続きまで拡大している。
2023年以降、商標局は実務上関連する先行権利の存否等を確定する事件に対し「原則中止」の方針で取り扱ってきたものの、当該方針は最終的に法令化に至らなかった。
これにより今後商標局が現行運用を見直し、手続き中止を行わない従来の対応に戻す余地が残された。
また裁判所による商標登録付与・先行権利の存否等を確定する事件の審理においては、「中止可能」の枠内で引き続き事情変更の原則を適用する余地が維持されており、手続きに起因する司法資源の無駄な消費という課題は依然として解消されていない。

4.現行法の第4条と第44条第1項を統合し、その対象を権利の有効性を判断する手続全般に適用

第19条は、現行法第4条に定める「使用を目的としない悪意的な商標登録出願」に関する登録禁止規定を、「使用を目的とせず、正常な生産経営需要を明らかに超える商標登録出願は、登録を認めない」旨に改正した。また現行法第44条の「欺瞞的な手段若しくはその他の不正な手段」により取得した登録商標を無効とする規定を商標登録要件の章に統合し、全ての先行権利の存否等を確定する事件において適用可能としている。
本条における「正常な生産経営需要を明らかに超える」という表現は、『商標審査審理指南(2021年)』における「使用を目的としない悪意的商標登録出願」の解釈に基づくものであるため、本条の審査基準に実質的な変更は生じていない。
ただし運用においては、登録禁止要件における数量偏重の判断傾向が一層強まる可能性がある。

5.未登録馳名商標は非類似商品においても保護を受けることが可能

第21条において、非類似商品における未登録馳名商標の希釈行為を禁止する規定が新設された。
これにより未登録馳名商標に対し、同一又は類似商品における混同行為のみならず、非類似商品における希釈行為も規制対象となり、登録済み馳名商標と同等の保護水準が実現された。本改正はCPTPP第18.22条第2項に定める馳名商標保護の要件に適合し、中国のCPTPP加入に向けた制度的基盤を整備するものである。

6.海外における紛争対応のため、国家知識産権局に対し馳名商標認定(認馳)を申請可能

第69条は、海外での商標登録審査又は紛争処理において、「当該商標が中国国内で関連公衆に知られていること」を証明する必要がある場合、当事者の請求に基づき、国家知識産権局が商標の馳名性を確認できる旨を定めている。
本条が最終段階で盛り込まれたことは、意外かつ喜ばしい成果である。近年、中国企業の海外進出が加速し、海外での商標紛争が急増している中、国家知識産権局が中国ブランドの知名度を公的に確認する制度は、中国ブランドの海外展開と権利保護にとって、時宜を得た重要な支援となる。
なお、本条は当事者の国籍を限定していないため、外国の商標権者も本規定を利用できる可能性がある。
新法施行後、海外紛争を契機とした馳名性確認請求が増えることで、中国国内事件における馳名性認定の運用も、より積極的かつ合理的な方向に改善されることが期待される。

7.職権による3年連続不使用商標取消制度の新設

第57条に第3項を新設し、不当使用による取消及び普通名称化による取消に加え、国家知識産権局が職権で、正当な理由なく継続して3年間使用されていない登録商標を取り消すことができるとしている。
2023年の意見募集稿では、商標登録から5年ごとに使用宣誓を強制的に提出させる制度が構想され、この仕組みは、放置された「ゾンビ商標」を整理するための効率的なルートとして設けられたが、各界の意見の対立が大きく、最終的に今回の改正には盛り込まれなかった。
新法に「職権による主動的な取消」の仕組みが新設されたことで、今後は関連行政法規の整備を通じ、一括チェック・立証の簡略化の運用基準が実現でき、低コスト・大規模で放置された「ゾンビ商標」を整理する有効な道筋が得られることが期待される。

8.動的標識を登録可能な商標として明確化

第14条は法定登録可能標識の種別に動的商標を新たに加え、デジタル経済下における新たなブランド表現形態の知的財産権保護ニーズに対応している。
第17条及び第70条第2項においても関連規定を新設し、機能的な動的標識は登録できないとし、機能的性質を有する動的標識を正当使用の対象として位置づけた。
これにより、動的標識に関する登録ルールおよび保護体系が整備された。

9.商標初歩査定公告に対する異議申立期間を短縮

第36条は従来の法定異議申立期間3ヶ月を2ヶ月に短縮し、権利確認手続き期間の圧縮と商標登録行政事務の効率化を図ると同時に、権利者による商標監視義務を強化する。

10.侵害訴訟における賠償責任に対する3年不使用の抗弁の起算時点を侵害行為発生前3年に規定

第78条では、「商標権侵害民事訴訟において、商標権者が商標を使用していないと被疑侵害者が抗弁した場合、裁判所は商標権者に対し、侵害行為発生前3年間における商標実際使用の証拠提出を求めることができ、商標権者が同期間の使用実績を立証できず、かつ侵害によるその他の損失も証明できない場合、被疑侵害者は賠償責任を負わない」と規定されている。
本条は草案における「提訴前」を「侵害行為発生前」に改定し、侵害行為発生から提訴までの期間において、賠償請求を目的として意図的に商標使用を行う事態を防止することを目的とする。
本改正は商標権者に対する使用義務を厳格化し、使用実態のない放置商標による悪意的な損害賠償請求を抑止する効果を有する。


[出典:NTD IP Attorneys]


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