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2018.10.10IPイギリス:ノー・ディールガイダンス公表


イギリス:ノー・ディールガイダンス公表

2019年03月29日のEU離脱(Brexit)に向け、イギリスとEUの交渉が続いている中、打開策が見いだせないまま「ノー・ディール(合意なき離脱)」となる可能性を指摘する声も多くなった。
こうした中、2018年09月24日、イギリス政府による「ノー・ディールの場合の商標と意匠」に関するガイダンスが公表された。

https://www.gov.uk/government/publications/trade-marks-and-designs-if-theres-no-brexit-deal/trade-marks-and-designs-if-theres-no-brexit-deal

イギリス政府は上記ガイダンスにおいて、「登録商標と意匠のイギリスにおける保護の継続」「未登録共同体意匠のイギリスにおける保護の継続」等の内容についてそれぞれ、2019年03月前後に分けて制度を説明し、企業やブランドオーナーに取るべき対応策を勧めている。

ガイダンスでは英国法に基づき、現行のEU制度による権利保護を維持することを強調しているようだ。

ガイダンスによれば、ノーディールの場合、2019年03月29日以降EU商標、共同体意匠は以下のように取り扱われる。

1)2019年03月29日時点で登録済みの権利
・イギリスで同等の新しい権利が付与され、引き続き同国内で保護される。
・最小限の費用負担(minimal administrative burden)が必要となる。
・新しい権利が付与されると、その旨の通知が権利人に送付され、権利人は同国の保護を希望しない旨の申請(オプトアウト)も可能である。
・係属中の紛争については、新しい規定が設立される予定である。

2)2019年03月29日時点で出願中の場合
・離脱日から9ヵ月以内にイギリスへ再出願できる。この場合、EU出願日の優先権主張が可能である。
・登録済みの権利とは異なり、出願人への通知はない。
・再出願にかかる手続と費用は通常の英国出願と同様である。

3)未登録共同体意匠について
未登録共同体意匠は、共同体内で最初に公開された日から3年間保護される。これはEU独自の制度であり、イギリスの意匠権とは保護対象と期間が異なる。
・イギリス法にEUの未登録意匠権と同等の権利を新たに創設し、離脱時点で存在する全ての未登録共同体意匠は、離脱後もこれにより保護期間終了まで保護される。
・この新しい意匠は補助未登録意匠(supplementary unregistered design right)と呼ばれる。
・この新しい意匠によって、離脱後にイギリスで最初に公開された未登録共同体意匠もイギリス国内で3年間保護される。

また、イギリス政府は権利消尽についてもガイダンスを公表している。
https://www.gov.uk/government/publications/exhaustion-of-intellectual-property-rights-if-theres-no-brexit-deal/exhaustion-of-intellectual-property-rights-if-theres-no-brexit-deal

権利消尽は、欧州経済領域(EEA)における自由取引を促進するために機能しており、EU商標及び登録共同体意匠のEU規則に明記されている。即ち、EU加盟国間では、並行輸入による権利侵害の問題は生じないのが現行の「域内限定」消尽ルールである。
ガイダンスでは2018年03月以降もEEA消尽ルールを維持し、EEAからイギリスへの並行輸入については従来と扱いが変わらない。これは薬品等の商品について離脱後も問題なく並行輸入できるよう確保したものである。
ただし、イギリスからEEAへの並行輸入の場合、国によっては制限がある可能性があり、輸出先のEU権利をチェックし、事前承認を得る必要があるか確認しておくことも必要である。

イギリスEUの交渉は現在も継続中であり、ノーディール対応が必要になるかは不明だが、いずれにしても残された時間は短く、進展が在り次第、IPニュースでもお伝えする予定である。


[出典:gov.uk]


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