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2019.02.26IPEU:著作権法保護強化へ


EU:著作権法保護強化へ

2018年07月24日号、09月26日号でもお伝えしてきたが、著作権法の改正案を巡ってEU加盟国で構成する閣僚理事会などが2019年02月13日に合意し、EUが検討中のインターネット上の著作権の保護強化策が2020年にも施行される見通しとなった。これは米グーグルなど「プラットフォーマー」と呼ばれるIT巨大企業に、著作権侵害コンテンツの削除や適切な著作権の使用料支払いを義務づけるのが柱となる。
閣僚理事会と欧州議会、EUの欧州委員会による政治合意が成立したのはEUの著作権法の改正案で、約20年ぶりのEU著作権ルールの本格的な改正となる。IT業界の反発などで協議は難航していたが、合意にこぎ着けたことで5月の欧州議会選挙前の改正案成立のめどがたった。
EUは2018年05月に、企業による個人データの扱いを厳格化する一般データ保護規則(GDPR)を施行した。課税面でも、IT巨大企業の「税逃れ」を防ぐため、EU域内の売上高に3%課税するデジタルサービス税を検討するなど規制の網を広げている。データの「寡占」への警戒が世界的に広がる中、欧州の政策論議が他の国や地域へ波及する可能性がある。
改正案は、グーグル傘下の「Youtube」や米Facebookなどプラットフォーマーに対し、ネット上に著作権を侵害するコンテンツが掲載されるのを未然に防ぐ責任があると明確にした。従来は著作権侵害を見つけた権利者がプラットフォーマーに削除を要請していたが、十分な対応がなされなかった場合の法的責任はプラットフォーマー側にあるとした。
主な対象となるのは、グーグルなど米IT企業である。発足から3年未満で、年間売上高が1000万ユーロ(約12億5000万円)未満、月間の利用者が500万人未満の中小規模のプラットフォーマーは対象外となる。
さらに、ネット上のニュース記事や動画、音楽などの著作物の制作者に公平な使用料を支払うことも義務づける。例えば欧州の報道機関は、「グーグルニュース」のようなネット上の記事集約サイトなどの記事使用料に関する交渉をしやすくなり、作者はその収益を受け取れるようになる。
一般のネット利用者が著作権で保護された作品の模倣やパロディーをYoutubeなどに投稿することは制限しない。研究や教育目的の利用も引き続き可能とする。
改革を巡っては、表現の自由を制約するとして反発するIT業界と、改正を求める報道機関やアーティストなどが互いに強力なロビー活動を展開してきた。欧州議会や閣僚理事会は当初1月中の改正案での政治合意を目指していたが協議は難航した。米ブルームバーグ通信は1月下旬、グーグルが改正案に反発して「グーグルニュース」の欧州大陸からの撤退を検討していると報道し、一時は5月の欧州議会選前の改正案成立に不透明感も広がっていた。


[出典:IPPro the internet]


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