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2020.04.28IPアメリカ:Instagramの埋め込みは著作権侵害に当たらない


アメリカ:Instagramの埋め込みは著作権侵害に当たらない

2020年04月13日、ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所は「『Instagramの埋め込み』は著作権違反に当たらない」という判決を下した。同様の判決は以前にも存在したが、今回の裁判では、審理に際して弁護側が展開した論理に対して注目が集まっている。
この事件は、IT系ニュースサイトMarshableが2016年に報じた「社会正義と戦う報道写真家10人」という記事に関する。写真の利用料としてMashableは報道写真家たちに1枚50ドル(約5400円)という金額を提示したが、そのうちの1人、ステファニー・シンクレア氏はライセンスの提供を拒否した。Mashableがシンクレア氏の写真を直接使用する代わりに、シンクレア氏の公式Instagramアカウントから「埋め込み」機能を使ってシンクレア氏の写真を引用したところ、シンクレア氏は著作権侵害だとしてMashableを訴えた。
この一件を報じたIT系ニュースサイトArs Technicaによると、この種の法的論争は「著作物がどこから配布されるのか」に焦点を当てる「サーバーテスト」と呼ばれる論理を巡って争われてきた。埋め込み機能を使った場合、著作物はあくまで「そのサービスのサーバー」からダウンロードされている。つまり今回のケースでいえば、「Mashableの記事には、Instagramのサーバーからダウンロードされたシンクレア氏の写真が表示されていた」ことから、ほとんどの裁判所は「著作物をユーザーに配布したり表示したりしていない」と認定して、「埋め込みは直接的な著作権侵害には当たらない」という判断を下してきた。
しかし、全ての裁判所がこの「サーバーテスト」と呼ばれる論理を認めているわけではない。過去には、「著作権所有者の許可なしに、ユーザーのブラウザに著作物を表示させたことは事実である」という理由から、「トム・ブレイディ氏の写真をTwitterの埋め込み機能を使って表示させた記事は著作権侵害にあたる」という判決が下されたこともある。
しかし、今回の裁判においてMashableの弁護団は全く異なるアプローチを採用した。弁護団が展開した論理は、「シンクレア氏がInstagramに写真をアップロードした際に、シンクレア氏は『写真を使用して良い』というライセンスをInstagramに付与している。Instagramの利用規約には、『Instagramは写真を他人にサブライセンスする権利を有する』と記載されている。Instagramの埋め込み機能はInstagramのサービスの一環であるため、Instagramからサブライセンスを受けているのと同義である」というものであtった
実際に、Instagramの利用規約には、「弊社が利用者のコンテンツの権利の帰属を主張することはありませんが、利用者はコンテンツを使用するためのライセンスを弊社に付与します」「ただし、利用者がサービス上で、またはサービスに関連して、知的財産権の対象となっているコンテンツ(写真や動画など)をシェア、投稿またはアップロードする場合、利用者は、弊社が(利用者のプライバシー設定およびアプリ設定に沿って)利用者のコンテンツをホスト、使用、配信、変更、運営、複製、公演、公開あるいは翻訳し、また派生作品を作成する非独占的、使用料なしの、譲渡可能、サブライセンス可能な全世界を対象としたライセンスを付与するものとします」と明記されている。
今回の審理を担当したキンバ・ウッド判事は「シンクレア氏はMashableに直接ライセンスを付与しなかった。しかし、シンクレア氏はInstagramに対してサブライセンスを付与する権利を与え、InstagramはMashableに対して写真を表示することを許可するサブライセンスを付与した」とし、Mashableの主張を全面的に認めた。
このような著作物の利用には、さまざまな注意点が存在する。その1つは、著作権所有者以外の第三者が画像やビデオをアップロードした場合で、当然ながらこういった画像やビデオは、埋め込み機能を使ったとしても著作権侵害に当たる。
また、Instagramのようなネットサービスにアップロードされた画像だからといって、埋め込み機能のような「公式機能」を使っていない場合は、著作権侵害に当たる。ネットサービスがサブライセンスを付与できるのは公式機能を使っている場合に限られるので、公式機能を使わない場合は著作権所有者とのライセンスの交渉が必要である。


[出典:courtlistener.com]


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