2009.12.08IPイギリス:商標の出願審査手続に関する変更 他
イギリス:商標の出願審査手続に関する変更
イギリス特許庁は商標出願の審査手続について幾つかの変更を発表し、2009年10月1日付で施行された。主な変更点は下記の通りである。
- 電子出願の場合にはオフィシャルフィーが£30削減される。
- シリーズ商標(1出願に商標のバリエーションが複数含まれるもの)の取り扱いの見直しがされた。従来は同一のオフィシャルフィーで無制限にバリエーションを1出願に含めることができたが、2009年10月1日より、1出願に含めることができるバリエーションの上限が6つとなり、バリエーションが3つ以上となるとバリエーション毎に追加のオフィシャルフィーを支払わなければならない。
また、審査の結果、シリーズ商標に該当しないと判断された場合、従来は分割出願ができたが、今後はバリエーションを削除しなければならなくなる
- 解説
-
シリーズ商標とは、その本質的部分が互いに類似しており、商標の同一性に実質的な影響を及ぼさない識別性のない部分のみが相違している商標を言い、色違いの商標や書体が異なる商標を一件で出願する際に利用されます。1出願に含めることができるバリエーションの数に上限が設けられましたが、6つまで含めることができれば通常は大きな不都合はないと思われます。一方、シリーズ商標と認められない場合には分割が認められなくなりましたので、出願時にシリーズ商標として出願すべきか否かについては、従来よりも慎重な検討が必要となります。
上記以外のユニークな変更点として「Right Start application service」という制度の開始があります。これは、出願時に先ずオフィシャルフィーを半額のみ納付し、審査官の審査結果レポートを見たうえで、出願を継続する場合には残りの半額を納付すれば良いという制度です。この出願方法は電子出願の場合にのみ認められますが、残念ながら£30の値引きの適用はありません。
その他、期間延長の費用が£50から£100へと値上がりしていますが、これも実務的には少なからず影響のある変更です。
[出典:Marks & Clerk]
リベリア:マドプロ加盟へ
リベリアは2009年09月11日にWIPO事務局長へマドリッド・プロトコル加入の書面を提出し、同議定書は2009年12月11日付で同国において発効される。
リベリアの加盟により、マドプロ加盟国は80となる。
- 解説
-
リベリアの出願は、建前上は識別力、先行商標との類否について審査されることになっていますが、事実上は方式審査だけで登録されるようです。リベリアのような現地法制に関する情報が少ない国においては、チェックボックスに印をつけるだけで権利を確保できるマドプロの利用が可能となったことは非常に便利と言えます。もっとも、リベリアは長期にわたる内戦からの復興途中であり、日本との貿易も事実上は殆どありませんので、現時点でのマーケットとしての重要性は低いかと思われます。
[出典:WIPO Information Notice No. 17/2009]
OHIM:商標審査基準の改正
マドリッド協定及び議定書に関する共通規則(Common Regulations)に改正があったことを受けて、OHIMの商標審査基準が改正された。改正は国際登録商標の中間及び最終ステータスに関する情報へのアクセスの改善を目的とするもので、2009年09月01日付で発効された。
これにより、CTMを指定する国際商標の審査にあたって、OHIMが発行していた"First Statement of Grant Protection(登録査定に関する最初の通知)"は、"Interim Status of the Mark(商標の中間ステータス)"に変わり、絶対的理由に基づく暫定拒絶理由が発せられる場合にそれを克服できた場合も含めて、その後の異議申立期間が開始される前に発送される。
"Second Statement of Grant Protection(登録査定に関する第2の通知)"は"Statement of Grant of Protection (登録査定通知)"となり、その後部分的にせよ全体的にせよCTMを指定する国際登録が登録となった場合に発送される。
- 解説
-
絶対的拒絶理由が発見されなかった段階でWIPOに通知されていた「First Statement of Grant Protection」の呼び方が「Interim Status of the Mark」となり、異議申立期間内に異議が無かった場合に通知されていた。「Second Statement of Grant Protection」の呼び方が「Statement of Grant of Protection」と変わりますが、手続き上の実体的変更があるわけではありません。これは、マドリッド協定及び議定書に関する共通規則の改正に合わせて用語を統一したものです。
ところで、共通規則の改正は、従来任意であった保護を与える旨の声明の送付を各加盟国に義務付けるという内容です。今までは国際出願の後、何の音沙汰も無く拒絶の通報期間(1年又は18ヶ月)が経過することで、いつのまにか保護が認められていたということもあり得ましたが、今後はこのような不確かな事態は解消されます。
[出典:MARQUES NEWS]
中近東:オフィシャル費用の上昇
2009年12月よりオマーンやヨルダン等、中近東の複数の国でオフィシャルフィーが上昇しています。ヨルダンでは、商標出願、更新、審判等のリーガル手続きに関するすべての費用が突然100~2500%上昇したとのことです。詳細は不明ですが、分かり次第、ご連絡いたします。
[出典:Abu-Ghazaleh Intellectual Property]
- アメリカ:改正により導入された情報不足加算料の詳細2024.12.10
- 台湾:商標の誤認混同のおそれの有無を判断する際の重要な参酌要素2024.12.10
- アメリカ:システム誤作動による放棄通知発行2024.12.10
- 中国:商標抹消登録手続きに関する指針を発表2024.12.10
- アイスランド:オフィシャルフィー改定(2025年2月15日)2024.12.10
- カナダ:オフィシャルフィー改定(2025年1月1日)2024.12.10
- アメリカ:オフィシャルフィー改定(2025年1月18日適用)2024.11.26
- リビア:書類提出時の新たな規則(2024年05月01日施行)を撤回2024.11.26