2021年11月30日ブランディングネーミングのためのコミュニケーション術 ~商標担当者へ贈る言葉 (前編)~
―――これまでネーミングプロジェクト担当者が商標担当者とコミュニケーションを図る上で押さえるべきポイントを前編・中編・後編にて解説いただきました。
考え方の根本はネーミングプロジェクト以外の日々の業務にも生かせるのではないでしょうか?
さて今回はまさに「逆の立場」として商標担当者がプロジェクト担当者とコミュニケーションを図る上で押さえるべきポイントについて解説していきます。
プロジェクト担当者のミッションとは?
―――今回は商標担当者に向けた、プロジェクト担当者とコミュニケーションを取る上でこれだけは意識して欲しいポイントについて解説をお願いします。
西岡 はい。でも、ポイントをお伝えするその前に、まずは考えるべきことがあるはずです。
―――考えるべきことですか?
西岡 「プロジェクト担当者に贈る言葉~前篇~」でもお伝えしましたが、プロジェクト担当者の会社での役割やミッションについてご存知でしょうか?まずはそこから考えてみましょう。
―――そうでしたね。ネーミングプロジェクト担当者のミッションは、今まで解説いただいたお話なども踏まえると、
①ネーミングを考える事
②ネーミングを決める事
でしょうか?
西岡 そうですね。その2つは非常に重要ですし、プロジェクト担当者が日々、頭を悩ませている事でもあります。しかしプロジェクト担当者のミッションは「対象となる製品やサービスを最適なタイミングで、まぁたいていは1日でも早くですが・・・、世に出せる状態にすること」です。
―――なるほど。
西岡 ネーミングを考えそして決めることで、ようやくスタートライン、そうブランディングのスタートラインに立つことが出来るのです。
―――ネーミングを「考える事」「決める事」はゴールではなく「手段」であると?
西岡 その通りです。ネーミングを決めて「ミッション完了‼」ではなく、ネーミングを決めて世の中に出して、ユーザーが利用できる環境にしてこそ本当の意味で1つのミッションが完了となります。
―――商標担当者と同様、目の前にある業務=本当の目的・ミッションではないということなんですね。
西岡 その通りです。そしてプロジェクト担当者もネーミングを考案して商標担当者に相談しにくる過程でさまざまなハードルを越えてきています。
―――過去の「今日から実践シリーズ」でご紹介いただいたあの怪獣たちですね?
≪今日から実践シリーズ≫
西岡 はい。そうなんです。プロジェクト担当者はこれらの怪獣たちと戦ってきて、もしくは戦いながら、疲弊してボロボロになった状態で商標担当者の基に相談に来てるんです。
―――すでに満身創痍でなんですね・・・
西岡 そしてプロジェクト担当者にとっては最後のラスボスである商標権と戦う上で、「商標担当者は最後の拠り所である」とも言えます。
―――なるほど。だからと言って「労わって、優しく接してくださいね」なんてことはないですよね?
西岡 もちろんです。しかしプロジェクト担当者も商標担当者に相談に来た頃には、既にボロボロで、さらにはネーミング決定後も、プレスリリースであったりパンフレットなどであったり広告宣伝であったり、「まだまだ乗り越えなければならない壁がたくさんあるんだな」という事実は頭の片隅に置いていただけると、見え方や接し方は変わってくると思います。
―――わかりました。
西岡 さらに、基本的にこれらのプロジェクトを定められた期日、つまりリリースまでに完遂する必要があります。そして、残念ながら与えられる時間は非常にタイトなケースがほとんどです。
―――おそらく商標担当者の立場からすると「もっと余裕を持ったスケジュールで組んでくれ!」と思うケースが多いと思いますが?
西岡 意外に思われるかもしれませんが、それはプロジェクト担当者の立場でも同様です。「可能なら、もっとリリースまで余裕を持ったスケジュールにしたい!」と心の底から思っているのではないでしょうか?
―――そうだったんですね・・・。
西岡 製品を世に出すまでに商標権以外に認可が必要で、開発から製品リリースまでの期間が長い背景がある、例えば製薬関係や農薬関係などの業種などは例外で、基本的にはタイトなスケジュールが敷かれている場合が多いです。
―――なるほど。
西岡 さらには、リリース時期などが既に年間計画や上層部などで決められていたりと、プロジェクト担当者も調整が難しい場合の方が多いですね。
―――スケジュールがタイトなプロジェクトは「プロジェクト担当者の見通し、計画が甘いからだ」とばかり思っていました。
西岡 もちろん、リリースまでの全体の見通しが甘く、結果として非常にタイトなスケジュールとなる場合も0ではないです。こちらの課題については地道かもしれませんが社内啓蒙をコツコツと継続する必要があると思います。
―――なるほど。
西岡 一方で、良くも悪くも会社組織である以上、プロジェクト担当者もある程度与えられた枠組みの中で動かざるを得ないのも事実です。そして実は、プロジェクト担当者もスケジュールなど調整が難しい中で、なんとか現実的な落としどころを社内で交渉をし続けているという苦労は知っておいていただければと思います。
―――たしかに言われてみると、ネーミングで出てくる怪獣たち以外にも、いろいろな怪獣と戦っていたんですね。結構、見えているようで見えていない部分も多かったように感じます。
それでは次回は本日のお話をふまえ、プロジェクト担当者との具体的なコミュニケーションについてお話いただきます。
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