IPニュース IPニュース

商標・著作権・特許・意匠・ドメインネームなど、知的財産権全般にわたる世界中の出来事を集約。
注目すべき主なニュースをわかりやすい記事にまとめ、リリースいたします。

2021.07.06IPEU:「エバーグリーン」(悪意)の認定について


EU:「エバーグリーン」(悪意)の認定について

2021年4月21日、一般裁判所はHasbro Inc.対 EUIPOの判決において、同一の商標を再出願する行為(エバーグリーン(evergreening)と呼ばれる)について判決を下し、悪意を理由に、EU商標(EUTM)を部分的に無効とした決定を覆すことを求めるHasbro 社の訴えを却下した(事件 T-663/19)。
この判決は、悪意の法律解釈に大きな進展をもたらすものである。

Hasbro社は、2011年に第9、16、28、41類の商品およびサービスについて、「MONOPOLY」という文字のEUTMを登録した。
これに先立ち、Hasbro社は、同じ文字標章について既に3つのEUTMを登録しており、1つ目は1998年、2つ目は2009年、3つ目は2010年に登録しており、これらはすべて、第 9、16、25、28、41 類の商品およびサービスについて保護されていた。

2015年には、ボードゲーム「DRINKOPOLY」の所有者であるクロアチアの会社との間で争いが発生した。
彼らは、Hasbro社の2011年の登録について、Hasbro社の出願は悪意に基づくものであり、この商標は無効であるという理由で、取消請求を行った。
この会社によれば、Hasbro社の2011年の登録は、それ以前の登録を繰り返して出願したものであり、その目的は、真正な使用の義務を回避するためであると考えられている。この争いは、EUIPOの取消部門から、EUIPOの審判部(BOA)を経て、最終的には一般裁判所に持ち込まれた。

「悪意」という概念は、日常言語における通常の意味に従い、不誠実な心境や意図の存在を前提としているが、この概念は、商取引における商標法の文脈においても理解されなければならない。
この規定の公益目的は、悪用されたり、誠実な商業・ビジネス慣行に反する商標登録を防止することである。
Hasbro社は、この戦略の利点は、出願人が商標を出願する際に考慮する要因の1つである、異議申立手続きにおける対象商標の真正な使用を証明する必要がないことであると認め、このような出願戦略の理由については、他に商業的な論理はないと付け加えていた。
審判部の段階では、出願人がこれは業界の通常の慣行であると主張していたことから、このような戦略を用いることは明らかに意図的なものであると判断された。

一般裁判所は以下のように判断した。「エバーグリーン」の慣行は、使用の観点から自社にとって有益であるだけでなく、他のブランド所有者が採用している戦略でもあるというHasbro社の主張は、Hasbro社が悪意を持って行動していたという一般裁判所の見解を補強するものでしかなかった。最終的に一般裁判所は、Hasbro 社の出願戦略は、自社の商標の真正な使用を証明する必要がない状況を人為的に作り出すことで、規則を意図的に利用したものであると判断した。
詳細はこちらを参照:CURIA

商標権者は、今後、再出願された欧州の商標が、他の商標権者から悪意を理由に攻撃される可能性があることを認識しなければならない。
しかし、EUIPOの審査官には、悪意を理由に出願を拒絶する権利はない。


[出典:TBK]


IPニュースの定期購読

IPニュースの定期購読(無料)も受け付けていますので是非ご利用ください。
購読をご希望の方は下のボタンからお申込みください。