2009.07.07IPフィリピン:使用宣誓書の案内にあたっての注意 他
フィリピン:使用宣誓書の案内にあたっての注意
フィリピン商標庁は2009年04月20日付で通知3号を発し、使用宣誓書に関する新しいガイドラインを発表した。
主な注意点は下記の通り
- 提出期限について
- (1) 登録期間が10年の商標権:出願3年目、登録6年目までの宣誓書。
6ヶ月の延長が認められるのは出願3年目の使用宣誓書のみ - (2) 登録期間が20年の商標権:それぞれ登録6,11,16年目までの宣誓書。
延長不可 - (3) 1998年以降に更新され、登録期間10年の商標権:登録6年目までの宣誓書。
延長不可
- (1) 登録期間が10年の商標権:出願3年目、登録6年目までの宣誓書。
- 使用証拠として認められるものについて
- 実際のラベル、包装、又は同様の素材
- HPの抜粋
a)フィリピンの在住者が当該商品をオンラインで購入できる場合のみ認められる。
或いは、b)フィリピンにおいて実際に商標が使用されている場合も認められる。
a)の場合、Webサイトアドレスが必要
b)の場合、店舗又は販売店の名前と住所が必要
いずれの場合も当該HPが出願人・権利人の所有するものか、スポンサーとなっているものである必要がある。 - フィリピンにおいて使用されていることを示すパンフレット又は広告資料のコピー。但し、フィリピン商標庁がオリジナル又は他の証拠の提示を求める場合がある。
- フィリピン国内に店舗や販売店がなく、他国からフィリピンへ輸入されている場合、当該事項を宣誓書に記載し、輸入業者の氏名と住所を記載すること。
使用宣誓書はファックス又はEメールでも提出できる。その場合、提出費用を期日までに納め、原本が提出日から30日以内に当局へ提出しなければならない。
- 解説
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このガイドラインの発表前には、ウェブサイト上の広告だけでも商標の使用に該当するのではないかと考えられていたが、単なる広告では不十分で、フィリピン国内での商品販売・役務提供又はフィリピン在住者のオンライン購入が可能となっている場合にのみ使用と認められることが明らかになった。したがって、日本の出願人・権利者も、フィリピンでの使用宣誓対策としては、フィリピンで現実に商品販売・役務提供するか、フィリピン在住者のオンライン購入の実績を作る必要があります。
なお、使用宣誓書の署名は、出願人又は権利者の代表者及び代理人にも認められていますが、署名する権限を与える委任状が必要かについてガイドラインは説明していません。安全のため、出願等の委任状中に、使用宣誓書に署名するという事項を入れておくことをおすすめいたします。
[出典:Federis & Associates]
ブラジル:2009年06月01日からオフィシャルフィー上昇
ブラジル連邦通商産業大臣は2009年05月12日付大臣令101号(2009年05月14日公告)により、ブラジル特許庁が科すオフィシャルフィーの値上げを認めた。
これはブラジルが2008年09月にPCT委員会によりISA及びIPEA機関として認められ、PCTの検索と翻訳を行うようになったため、その資金源を確保するために政府によって正当性がある、と判断されたことを受けている。
しかしながら値上げは特許のみならず商標、意匠及びソフトウェアの登録にも及ぶ。また、ブラジル特許庁はこれによって、ブラジル半導体回路集積法によって予告されていた半導体回路の登録も受けつけるようになり、当該サービスについてのオフィシャルフィーも定められた。
新しいフィーは2009年06月01日より発効されるが、それに伴い課金に関連するシステムも改正されている。
商標に関しては、オンラインとハードの出願により価格が異なる。
書面出願の場合、1商標1区分につき現在のオフィシャルフィーが260R$から400R$に上昇する。
オンライン出願には2つ価格があり、ブラジル特許庁が公開するオフィシャルリストに掲載されている指定商品・役務で出願する場合は300R$、それ以外の個々の指定商品・役務リストで出願する場合は350R$となる。現時点では多区分出願は認められない。
また、登録料は525R$から630R$に上昇した。
- 解説
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わが国では、昨年6月より商標出願、商標登録、更新などの印紙代が引き下げられ、共同体商標(CTM)についても、本年5月より登録料が廃止され出願から登録までの費用が約40%引き下げられています。
これに反して、ブラジルでは商標出願・登録等のオフィシャルフィーの値上げとなりました。
しかも、その理由はPCTの検索と翻訳の資金源確保とのこと、あまり納得のいく理由とは思われません。
[出典:Momsen, Leonardos & Cia]
韓国:無効商標と類似することを理由とする拒絶に関する法律が一部違憲とされる
韓国商標法第71条3項によれば、「商標登録を無効とする審決が確定したときは、その商標権は、最初からなかったものとみな」される(無効審決の遡及効)。
しかしながら、商標法第7条(3)によれば、無効の審決が確定した後でも、無効となった商標と同一又は類似の商標は拒絶される(遡及効の適用除外)。
これは無効の遡及効を際限なく認めた場合、後願の商標は無効審判の審決が下りた日後に出願されたか否かが問題となり、商標権の関係を不安定にするためである。従って、上記条文は一貫性を保つことを目的とする。
しかしながら上記条文は、同時に、無効を理由に、先願商標のために後願の出願人が後願商標を再出願しなければならないという事態を招き、結果として出願人の財産権を侵害することになるため、大韓民国憲法裁判所は2009年04月30日付で憲法違反であるとの判決を下した。これにより、当該法律は無効となる。
- 解説
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韓国商標法7条(3)は、7条(1)(vii)(先願先登録商標との類似)及び7条(1)(viii)(後願商標の出願日から1年以内に消滅した先願先登録商標との類似)の適用は、出願時に判断されると規定しており、7条(1)(viii)の先願先登録商標には、無効とされた登録商標も含まれます。
したがって、先の商標権が無効となった場合でも、無効確定日より1年以内に出願した後願は、7条(1)(viii)の拒絶理由を回避することができないので、再出願するしかありませんでした。
憲法裁判所は、正当な理由なく後願出願人の財産権及び当該商標を使って職業を遂行する自由を侵害するのに対し、混同防止という法目的にはさほど寄与するとも考えられないため、7条(3)の無効とされた商標権も含むとする部分について、違憲と判断した訳です。
これにより、1年以内に無効となった商標と類似する商標の出願も、登録されることになります。
わが国でも、商標権が消滅した日(取消決定確定日、無効審決確定日)から1年を経過していない先願先登録商標と類似する商標は拒絶され(商標法4条1項13号)、この規定には無効となった商標権も含まれます。しかし、わが国では、判断時が査定時又は審決時であるため、出願の係属中に先の商標権が消滅した日から1年経過していれば拒絶理由は解消するので、査定又は審決を猶予してもらうことにより最終的な拒絶は回避できます。
もっとも、わが国の商標法4条1項13号も、もはや不要ではないかと長年にわたって議論されていますが、相変わらず存在し適用されているのは、実務家としては迷惑としか言いようがありません。
[出典:Barun IP & Law]