2015.05.14IP中国:知的財産権濫用による競争排除・制限行為の禁止に関する規定発行 他
中国:知的財産権濫用による競争排除・制限行為の禁止に関する規定発行
2015年04月13日、中国国家工商行政管理総局(SAIC)は『知的財産権濫用による競争排除・制限行為の禁止に関する規定』を採択し、同規定は2015年08月01日より施行される。これは独占禁止法からまさに8年目でようやく施行されるものだが、SAICは価格に係らない反競争的行為のみを管轄するため、当該規定も価格に係らない、競争を制限又は排除する知的財産権の濫用に関するものとなる。当該規定は知的財産権の権利行使と優越的地位濫用の線引きを明確化し、違反行為への罰則を定めている。その特徴は以下の通り。
関連市場と企業の関係について
第3条において、関連市場は技術市場であっても、特定の知的財産権を含む製品市場であってもよいとされた。
契約における企業の関係は知的財産権濫用に関する規定のどの条項を適用するか決定するにあたって重要であるが特に新規ビジネス等の分野においては複雑であり、特にライセンサーとライセンシーは製品市場では競合するが、技術市場では上下関係にある。本規定15条はこれについて明確に「ただし、当事者同士が許諾協定を締結する時点では競合関係になく、協定を締結して初めて競合関係となった場合には、当初の協定に実質的な変更がない限り、やはり競合者同士の協定とはみなさない」と定めた。
独占的行為に関するセーフハーバー
第5条において、独占的行為と認定されない権利行使行為について以下の要件が定められた。
- (1) その行為の影響を受ける関連市場において、競合関係にある事業者の市場シェアの合計が、20%以下であること又は関連市場における適正なコストで取得できる他の独立製御の代替技術が4つ以上あること
- (2) 関連市場における事業者と取引の相手方の市場シェアが、いずれも30%以下であること又は関連市場に適正なコストで取得できる他の独立制御の代替技術が2つ以上あること
本条項は独占禁止法及びその関連規則下において初めて規定されたセーフハーバー条項である。
不可欠設備(Essential Facility)条項
不可欠設備(Essential Facility)とは、ある一定の事業活動を行うにあたり必要不可欠な施設ないし設備であり、同種の設備を設けることが経済上又は技術上不可能な設備を指す。これは特に電話、電気、ガス等の事業分野において公共事業であったが、現在では同設備の解放により独占禁止法における自由公正な競争の確保の見地から独禁法との関係の調整問題が発生し、特に中国では電気通信事業分野において海外企業からの懸念が表明されている。これについて第7条において不可欠設備の他業者への拒絶ができない場合が規定された。
- (1) 関連市場では当該知的財産権は適正に代替されることができなく、関連市場での競争に参入しようとする他の事業者には必須であること
- (2) 当該知的財産権の許諾を拒絶すると、関連市場における競争又はイノベーションに不利な影響をもたらし、消費者利益或いは公共利益を損害すること
- (3) 当該知的財産権の許諾を行っても、当該事業者の不合理な損害には繋がらないこと
当該条項はSAICがどのような条件において知的財産権が不可欠設備と見なされるかを非常に苦慮しながら検討した結果であるが、「不合理な損害」等明確でない要素も多く、実際にどの程度まで現実に適用されるか不明である。
支配的地位を有する事業者に禁止される不合理な制限条件を付帯した行為第10条において、以下の行為が制限された。
- (1) 取引の相手方に、その改良した技術の独占的グラントバックを要求すること
- (2) 取引の相手方がその知的財産権の有効性について、疑義を質すことを禁止すること
- (3) 許諾協定の期間が満了した後に、取引の相手方が知的財産権を侵害しない状況において、競合商品又は競合技術を使用することを制限すること
- (4) 保護期間がすでに満了又は無効と認定された知的財産権について、引き続き権利を行使すること
- (5) 取引の相手方が第三者と取引することを禁止すること
- (6) 取引の相手方に、その他の不合理な制限条件を付帯すること
パテントプール
第12条においてパテントプールが明確に以下のように定義された。
「2又は2以上の特許権者が各自に所有している特許について、ある種の形式により共同で他の第三者に実施を許諾する協定の措置をいう。その形式としては、それを目的に設立される専門の合弁会社であっても、プールのある参加者又はある独立した第三者に管理を委託してもよい」
罰則規定
第17条において事業者が知的財産権を濫用して競争を排除・制限する行為が独占的協定に当たる場合、工商行政管理機関は、違法行為の差止を命じ、違法所得を没収し、前年度の売上高の1%以上10%以下の罰金を併科する。合意した独占的協定をまだ実施していない場合、50万元以下の罰金に処することができる。
事業者が知的財産権を濫用して競争を排除・制限する行為が市場支配的地位の濫用に当たる場合、工商行政管理機関は、違法行為の差止めを命じ、違法所得を没収し、前年度の売上高の1%以上10%以下の罰金を併科する。
工商行政管理機関は、具体的な罰金額を決定するに当たって、違法行為の性質、情状、程度、継続時間等の要素を考慮しなければならない。
本規定は中国独禁法の発展における重要なマイルストーンともいえるものであり、今後更なる改善が必要なものであるが、中国のビジネス展開を考える企業にとって重要なガイドラインとなるものである。
[出典:Kangxin, Bird & Bird]
カザフスタン:知的財産権法改正
カザフスタンでは海外からの投資を誘致するため、法改正を含む様々な対応を行っている。その結果、『知的財産分野における問題と法的規則に関するカザフスタン共和国改正法』が2015年04月20日から施行された。その重要な改正点は以下の通り。
並行輸入と消尽論
旧法において国内消尽論が採られていたが、改正法ではユーラシア経済連合(EAEU)において、同加盟国内に正当な権利者又はその同意のもとに市場に合法に流入された商品に関しては権利侵害が認められないことになった。地域消尽論の原則ではEAEU内における並行輸入は認められていないが、商標権者は同地域内における商品の流通を更にコントロールする権利を失うことになる。しかし一部の商品(医薬品、自動車部品等)については国際消尽論が適用され、同地域内における並行輸入が認められる。
譲渡及びライセンス契約書の簡易登録
商標登録、変更登録等に関するシンガポール協定は2012年09月05日付でカザフスタンで発効したが、プラクティスにおいてはその実施は行われていなかった。
改正法では申請書に当事者双方の情報、対象商標と範囲を記載し提出することになるが、それでもラインセンス契約書の写(要認証)、宣誓書等内容を証明する書類が求められる。
登録証発行廃止
改正法において、登録証は発行されず登記簿から登録証明書が発行されることになる。
審査期間の短縮
改正法においては審査、査定等に係る期間が設定され、審査期間が大幅に短縮された。
絶対的事由の変更
旧法において国際的に登録できない医薬品名を含む識別性がない商標は殆ど拒絶されていたが、改正法では当該拒絶事由は削除された。
フランチャイズ契約の登録義務化
カザフスタンの民法典ではフランチャイズ契約の登録は義務付けられており、改正法においてライセンス契約同様の条項が適用されることになった。
[出典:Dentons]
ロシア:関税法改正
ロシアは2010年11月27日付ロシア連邦共和国関税規則に関する連邦法第311-FZ号を改正し、2015年04月06日に連邦法第73-FZ号が採択され、2015年05月08日に発効した。
旧法において知的財産権者は根拠のない差止によって貨物の所有者、受取人等が被った損害を補償する責任補償宣誓書を提出しなければならなかったが、実際には特定の個人によって被った損害を補償する銀行保険契約書を提出していた。
改正法において、補償金額が最低でも5,230EUROの銀行保険契約書の提出がある場合のみ、知的財産権の税関登録が行える。
[出典:SD PETOSEVIC]
ブルネイ:商標出願増加
ブルネイ知的財産庁(Brunei Darussalam Intellectual Property Office, BruIPO)の統計によれば、内国商標出願件数は2014年には前年度の2倍に増加した。
同庁によれば、2013年の出願件数は41件であったのに対し、2014年度は2倍超の101件となり、2008年以来最多となった。
2014年の国外からの商標出願件数は1,074件で依然として多いが、2013年の1,094件より減少している。2008年以来、総計で国外から6,291件、国内から322件の商標が出願された。
[出典:The Brunei Times]
インドネシア:新IPデータベース運営開始
インドネシア知的財産総局(DGIPR)は特許、商標、意匠データを統括する総合知的財産権データ情報サービスシステム(LADI HKI)の運営を開始した。
これはWIPOの援助で数年前から開発が進められていたものであり、以下のURLで検索可能である。
[出典:Rouse]
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