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商標・著作権・特許・意匠・ドメインネームなど、知的財産権全般にわたる世界中の出来事を集約。
注目すべき主なニュースをわかりやすい記事にまとめ、リリースいたします。

2015.08.25IPOECD:「知財の税逃れ」防止に関する新ルール 他


OECD:「知財の税逃れ」防止に関する新ルール

タックスヘブン、軽課税国等に特許や商標権等の知的財産権を移行して行う節税対策を阻止するため、経済開発協力機構(OECD)が大筋でまとめた国際ルールの概要が2015年08月13日判明した。

近年、スターバックス、グーグル、アップル等が名指しで批判されており、例えばスターバックスは英国に進出以来14年で約3840億円もの売り上げを計上したが、法人税の支払額はわずか約11億円で、しかも、2008年以降は全く英国の法人税を支払っていなかったことがロイター通信によってスクープされている。その手法は、英国のスターバックスが、いずれも軽課税国であるオランダやスイスに所在する関連会社に支払うコーヒー豆の英国への輸入の対価やロゴ(商標権)の使用料などを多額なものとすることによって英国における利益を圧縮していた、というものである。

グーグルやアップルに関しても知的財産権を軽課税国であるアイルランドに移転し、ライセンスはオランダを経由させ、最終的な利益についてはほぼ課税がないタックスヘブンである英領バミューダ諸島やケイマン諸島などに環流させることで、節税を行っている。このような節税策は「BEPS(Base Erosion and Profit Shifting)」と呼ばれており、和訳として「税源浸食と利益移転」という用語が用いられている。「租税回避」という用語が用いられていない点が、これらの節税策を違法と容易に認定できないことを表している。

このようなグローバル企業の行き過ぎた節税策に対抗するため、知財を移した後でも、税務当局が追加で課税できる仕組みが検討されており、9月にOECDの租税委員会で承認し、11月に開催される20カ国・地域(G20)サミットで採択される見通しである。

本社所在国の税務当局は、企業が知財を他国に移す際、譲渡額に応じて課税できる。だが譲渡額の適正価値を見極めるのは難しく、企業側が「あまり価値がない特許」などとして、不当に安く譲渡額を設定すれば税金は安く済む。その後、移転先の子会社が多額の特許料を稼いでも、本社所在国には税収が入らない。

新ルールは、この知財の譲渡額への課税を、移転後の価値に応じて一定期間にわたり追徴できる仕組みである。移転先の子会社が多額の収益を上げている特許があった場合、どれだけ収益を上げているか調査し、知財の評価額を算定する。この評価額が当初の譲渡額と比べて2、3割以上の開きがあれば、譲渡額が不当に安く見積もられたと判断して、差額に課税できる。
加盟各国は、委員会で承認後、国内法の整備などで新ルールへの対応を急ぐ予定である。知財の税逃れ対策は、OECDが2012年に始めた多国籍企業の国際課税回避への総合対策の一環で、15の国際ルールを9月末までにまとめる方針である。


[出典:businessnewsline]


アルジェリア:マドプロ加盟へ

アルジェリアは2015年07月31日付で世界知的所有権機関(WIPO)へマドリッド協定議定書への加入書を寄託し、同議定書は2015年10月31日付で同国内で発効される。同国の加盟でマドプロの加盟国は95か国となった。


[出典:WIPO]


ベトナム:偽特許庁職員に関する注意

ベトナム知的財産庁は、同庁の職員になりすまし、知的財産権についてメールや電話をかける詐欺グループがいることを公表し、注意を促している。これらのグループは商標権利者に対し類似商標の出願があり、権利者が新規出願をしなければ登録となると語っているという。この手口はよく中国のドメインネームについて送られてくるスパムメールの手口と同一である。ベトナム知的財産庁はこのようなケースについての同庁の連絡先を公表し、疑問を感じたらコンタクトするよう呼びかけている。


[出典:Rouse]


アメリカ:同日に提出された書類の順位に関する決定

2015年07月24日、アメリカ特許商標局商標審判部(TTAB)は、審判手続において同日に提出された書類は同時に提出されたものと看做すと判断した。この件は異議申立についてなされた決定である。

2014年09月、商標「COKE HEAD」が第25類に出願され、2014年12月31日、別の出願人によって同一商標が同一商品について出願され、同時に先願商標に対する異議申立が請求された。異議申立はアメリカ特許商標局(USPTO)のオンラインシステム(ESTTA)で請求され、自動的に手続が開始された。しかし、まさに同日に先願商標の出願人もまた出願の放棄手続をオンライン(TEAS)で申請した。
2015年02月、TTABは先願商標の出願人に対して、商標規則2.135条に基づき、異議申立人の同意を得ず、異議申立手続開始後に出願の放棄を行ったことに対する審理を開始した。
先願商標の出願人は、出願の放棄が異議申立の請求の5時間前に行われており、即ち異議申立手続は開始しておらず、同手続は不利益を被ることなく(wihtout prejudice)却下されるべきであると主張した。出願人はその主張の根拠としてUSPTOのタイムスタンプ付の申請書写しを提出した。
TTABは先願商標の出願人の主張を認め、同日に請求された異議申立と出願の放棄は同時に請求されたと看做されると判断した。従って、先願商標は異議申立の対象とはならず、商標規則2.135条は適用されない。

TTABはオンラインファイリングの時代においても、コンピュータシステムやネットワークは制限を受けやすいものであり、事件の日時を確定するのは困難である。本件においてTTABのESTTAシステムはTEASシステムと独立のものであり、USPTOの内部システムTRAMに基づき自動的にデータを進行させるが、出願が異議申立の対象となり得るかを確認するよう設定されていない。また、TRAMは継続的・自動的にアップデートされるシステムではないため、先願商標の放棄を反映していなかった可能性があると解説した。

本件において論点となったのは異議申立が出願人に不利益なく(without prejudice)却下されるか否かであったが、Without prejudiceであれば、同人は同じ商標を同じ指定商品について再出願することが可能である。


[出典:Finnegan, Henderson, Farabow, Garrett & Dunner LLP, Nutter McC lennen & Fish LLP]


中国:知的財産権サービス取引サイト運用開始

2015年07月20日、中国初の知的財産権サービス取引サイト「知汛網」(www.zxipr.com.cn)が運営を開始した。本プラットフォームはユーザーが知的財財産権に関するサービスを選択する場合のコンサルティング、知的財産権の電子取引支援提供を目指すものである。
「知汛網」において、企業は直接又は入札式でサービス提供機関を選択できる。
また、ビッグデータ分析によって各サービス機関の代理成功率を示し、価格やコメント等を掲載することにより、コストパフォーマンスのよい代理サービスを得られるよう支援する。また、「知汛網」は各サービス機関が無償で知的財産権に関するプラットフォームを構築し、オンラインサービス、取引を容易に実現させるため自主店舗開設を可能とすることで、優れたサービス機関が同サイトに集中するよう企画している。
同時に「知汛網」はサービス提供のモニタリング機能も提供し、ユーザーが出願又は訴訟等の進捗をオンタイムで把握できるようにしている。


[出典:国家知識産権網]


タイ:改正著作権法発効

タイでは2015年08月04日より、主にネット上における保護を目的とした著作権法第2版仏暦2558年が発効された。これはネット上のコンテンツの創作者を保護するものであり、旧法では侵害に対する罰則が明確に規定されていなかったが、改正法においてはこれを明確に定めるものである。
同法はまた、ネット上での文章・画像・動画の盗用を防ぐほか、ハッキング行為や情報の無断使用を防止し、著作権者の同意がない情報の掲載や、引用元の表示のない転載を禁じる。

裁判所の命令に基づき、海賊版・模倣品は廃棄され、違反者は罰金且つ/又は禁固刑が科される。罰金は10,000-100,000バーツで、商業目的の犯罪の場合、3か月から2年の禁固刑、且つ/又は50,000-400,000バーツの罰金又は併科となる。

しかしながら、同国の法律家からは、ツィッターで他ユーザーの発信を再投稿するリツイート時に、元の投稿に引用元が表示されていない場合も違反となる可能性を指摘し、大半のネット利用者の知識不足により混乱が生ずる虞があるとの見込みを示している。

タイ政府は同法の施行により新たなデジタル関連の製品・サービスの登場などにもつながるとし、ITをベースとするデジタル経済確立を目指すとしている。


[出典:IPPro the Internet]


イギリス:リッピングに関する新見解

イギリス知的財産庁は2015年08月06日、CD等のリッピングを認めた改正著作権法が音楽家団体訴訟により高等法院で否認されたこと関して、iTunesなどのソフトを使ってCDをリッピングすることは著作権法違反行為であるとする新見解を示した。

リッピングとはDVDやCD等に記録されているデジタルデータをそのままの形又はイメージファイルとして取り込むか、扱いやすい形のデータに変換してファイルにすることである。同語は「かっぱらう、搾り取る」等を意味する英語の「RIP」に由来する。この作業は実質的には複製行為であり、イギリス著作権法では元々、権利者の許可を得ずにCD等のリッピングを行う事は違法とされてきたが、個人の行為の取締りは事実上困難であり黙認されてきた。そのため英政府は、こうした矛盾解消のために、2014年10月に著作権法を改正してCDリッピングの合法化を行った。

しかし、これに反発した音楽家団体が改正著作権法は無効とする訴訟を提起し、英高等法院が2015年07月18日、音楽家団体側の主張を認めて、改正著作権法のCD等のリッピングを認める部分は無効との判断を下した。

この裁判所の判断に基づき、英知的財産庁が新たな見解を示したもので、知的財産庁はCDリッピングが違法というだけでなく、著作物が含まれる個人のPCのバックアップを取ることも、権利者の許可を得ずに行えば違法との見解を示している。

ただし、知的財産庁は、個人が自分のCDをリッピングすることで生じる楽曲の著作権保有者の権利侵害は、個人と著作権保有者との間の問題で、英政府はそうした個々の紛争問題には関与しないとも述べている。


[出典:businessnewsline]


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