2015.09.08IPイギリス領ヴァージン諸島:新商標規則開始 他
- イギリス領ヴァージン諸島:新商標規則開始
- 中国:OEM生産における商標の使用が認められた判例
- 中国:商標及び地理的表示に関する統計発表
- サウジアラビア:オフィシャルフィー上昇
- オマーン:一人企業の商標登録可能に
イギリス領ヴァージン諸島:新商標規則開始
2015年6月23日号でお伝えした通り、2015年09月01日より2013年商標法が施行された。これによりイギリス登録と国内出願の二重制度が廃止されることになる。
新法は以下の特徴を持つ。
- 役務商標採用
- 防護標章、シリーズ商標、証明商標、団体商標の採用
- ニース国際分類第10版採用
- 多区分制度採用
- 著名商標の保護
- 商標の定義拡大(音、匂い、味覚等の新しいタイプの商標も含む)
- 優先権主張
- 存続期間を14年から10年に変更
- 不使用取消を3年に
- 事前先行類似商標調査を義務化(検討中)
新法への移行手続きとして以下が定められている。
- 2015年08月31日までに出願された国内登録及びイギリス登録ベースの登録は新法下でも有効である。
- 新法施行時に係属中の国内・イギリス登録ベースの商標出願は旧法下で審査される。
- 旧法下で登録された国内登録の存続期限は14年のままとする。
- 既存の国内登録商標は旧イギリス分類からニース国際分類への書換を行う。
以上のうち、書換に関しては現在具体的な手続を確認中である。また新しいオフィシャルフィーも導入された。
[出典:Spoor & Fisher]
中国:OEM生産における商標の使用が認められた判例
中国では現在、OEM生産における商標の使用が果たして実際の使用と認められるか曖昧な状況となっているが、このたび、商標評審委員会(TRAB)がOEMにおける商標の使用を実際の使用と認める決定を下し、話題となっている。
2012年10月11日、Seven Seven Co., Ltd.はフランス企業SEBの登録商標「MIRRO」(第6847483号)に対して取消審判を請求した。当該商標は第21類の「調理機械器具等」について登録されていた。SEBは2009年10月11日から2012年10月10日までの期間について中国でのOEM生産における商標の使用に関する証拠を提出した。
2013年12月10日、商標局は証拠について不十分であるとし、登録商標を取消す決定を下した。2014年01月10日、SEBはTRABにOEM製造における商標の使用は商標法が定める使用の定義に合致するものであり、有効な証拠として認めなければならないとして再審請求をした。SEBはこの主張を裏付けるものとして該当期間における発注から商品の受け取りまでの完全な書類のセットを始め、積極的に証拠を提出した。
TRABは以下に基づき商標局の決定を覆した。
「商標の使用」とは商品、商品のパッケージ又は容器へ商標を付すこと及び商品の取引書類や宣伝、展示会その他の商業活動に使用することも含めた当該商標の商業的使用である。3年以上の不使用による商標取消を認めた2001年商標法の法制度の目的は登録商標の所有者に登録商標を付すことによって実際の真正な使用を奨励し、商標がその機能を十分に果たすことを確保するものである。
OEM商品は中国市場に入ってこないものであるが、もしOEMプロセスにおける商標の使用が商標法における商標の使用と認められない場合、これはOEM産業の発達を制限することになり、海外取引を拡大するポリシーに反することになる。
OEM商品に関しては専ら輸出用に製造され、中国市場に入ってこないことから商標は出所標示機能を果たさず、商標法でいうところの「使用」にはあたらないという意見がある。その一方でOEM生産は2002年商標施行細則第3条で記載する「商標の使用とは商品、商品のパッケージ又は容器へ商標を付すこと及び商品の取引書類や宣伝、展示会その他の商業活動に使用することも含めた当該商標の商業的使用である」に該当するという意見もある。
本件においてTRABは明らかに後者の意見を採用しており、これはHornby Hobbies Limitedの商標「SCALEXTRIC」とDaozhi Li Yuの商標「KA SITE(中国語)」の取消審判に関する裁判所の決定に対応するものである。
本件におけるSEBの勝因は十分な証拠と法制度の目的に基づいた主張を展開したためと考えられるが、現在の中国においてもOEM生産における商標の使用が商標法で定める「使用」の概念から全く除外されたものではないことを示す一例となっている。
[出典:MMLC、Wan Hui Da Law Firm]
中国:商標及び地理的表示に関する統計発表
2015年07月16日、北京で開催された第1回中国ブランドフォーラムにおいて国家工商総局副局長は、今年上半期まで中国の累積商標出願数が1684万件に達し、13年連続で世界トップになったが、ブランドの持続発展能力はまだ不足であることを述べた。
今年上半期まで、累計商標出願数は1684万件、累計商標登録数は1125万件、有効な商標登録数は951万件で、名実相伴う商標大国になった。品質から見れば、ブランド価値がアップされた一方、ブランドの国際影響力、市場競争力と持続発展能力はより一層引き上げる必要がある。
また2015年06月末時点の国家工商行政管理総局・商標局の統計によると中国の地理的表示の登録件数は2790件に達した。このうち外国の地理的表示は83件含まれる。
地域別に見ると、地理的表示登録件数が最も多い5省・直轄市はそれぞれ、山東(399件)、福建(258件)、湖北(214件)、重慶(198件)、江蘇(188件)となっている。
外国の地理的表示では、フランスが33件、イタリアが18件、アメリカが14件でトップ3を構成する。
商標局は今年、地理的表示商標の審査体制の整備と審査活動の法制化、制度化に取り組むとともに、登録された地理的表示の保護を強化してきた。
[出典:MMLC、集佳知識産権代理有限公司]
サウジアラビア:オフィシャルフィー上昇
サウジアラビアでは2015年10月15日より、更新と名義変更に係る公告のオフィシャルフィーが上昇する予定である。
従来のオフィシャルフィーは名義変更に関してはSAR500、更新に関してはSAR300であったが、新しいオフィシャルフィーはともにSAR3000となることが予定されており、約10倍の上昇となるため、現地代理人は早めの更新手続を勧めている。
[出典:NJQ & Associates]
オマーン:一人企業の商標登録可能に
オマーン商標庁はこの度一人企業(Individual company、営業許可、取引ライセンスを持つ個人)による商標登録出願を認める決定を発した。
以前オマーンでは企業法人のみが商標登録出願を認められていた。
かつて中国でも自然人は商標出願が認められていなかったが、認められて以降冒認出願が増えた状況を併せて考えると、オマーンについても今後このような傾向が強まる可能性が懸念される。
[出典:NJQ & Associates]