2016年のIPニュース

2016年10月25日号ブルネイ:マドプロ加盟へ 他

  1. ブルネイ:マドプロ加盟へ
  2. 中国:受理可能な指定商品・役務の拡大
  3. コソボ:6つの行政指示発効
  4. スイス:行政取消審判導入へ
  5. 中国:最初のGUI侵害案件に関する審理
  6. インドネシア:ピエール・カルダン商標権を失う
  7. アメリカ:クリントン氏と知的財産権の関連性

ブルネイ:マドプロ加盟へ

ブルネイは2016年10月06日付で世界知的所有権機関(WIPO)へマドリッド協定議定書への加入書を寄託し、同議定書は2017年01月06日付で同国内で発効される同国の加盟により、マドプロ加盟国は98か国となった。

[出典:WIPO]

中国:受理可能な指定商品・役務の拡大

中国ではここ数か月の間に出願人、代理人等の便益を図る改革が試みられてきたが、その一環として受理可能な指定商品・役務が拡大された。
中国商標局(CTO)によるニース分類表の運用について、かねがね商品と役務の標準的な表現しか認められないことは批判の的となっていた。現在の取引に主要な商品又は役務を提供する出願人にとっては、分類表から標準的な表現を選択するのは容易なことであるが、最先端又は非主流の製品を製造する先端企業或いは海外出願人にとっては、ニース分類表では不十分である。
CTOは2016年07月から3回に渡って通知書を発行し、ニース分類表に含まれていないものの、指定商品や指定役務として受理可能な3,200個の表現をリストアップした。上述3回の通知書をもって新たに認められた商品・役務のリストは、現在CTOの公式サイトに公開され、出願人に対してより多くの選択肢と柔軟な対応を与えている。

[出典:CPA]

コソボ:6つの行政指示発効

コソボでは2016年07月より知的財産権に関する6つの行政指示(Administrative Instructions)が発効されている。
2016年07月04日に発効した行政指示第08/2016号は、侵害の虞がある場合の商標出願の早期審査に関するものである。出願人は申請にあたり出願の詳細と出願書類の写し、侵害を証明する書類、オフィシャルフィーの支払証明書を提出しなければならない。
本行政指示が発効される前、出願人はこれらの書類に加え税関での手続又は民事手続が開始された証拠も提出しなければならなかった。
早期審査の提出について特に期限は設定されておらず、知的財産庁は申請日から15日以内に決定を下す。
2016年08月02日に発効した行政指示第10/2016号は、単一オフィシャルフィーの導入といくつかの事項に関するオフィシャルフィーの変更に関するものである。
この行政指示以前、コソボでは自然人と法人には別のオフィシャルフィーが科されていた。オフィシャルフィーの変更により特に異議申立と無効審判に関する費用が上昇している。
2016年08月12日と22日に発効された行政指示第11/2016,12/2016号はそれぞれ地理的表示(GI)と意匠権の登録手続に関するもので、申請、登録、公告、変更登録、更新、無効の手続について記載している。
2016年09月02日に発効された行政指示第13/2016号は、特許の手続に関するものである。
2016年09月07日には、商標の変更登録又は更新の申請にあたって必要となる書類や手続を規定した行政指導第14/2016号が発効された。この指導では、各申請にあたって委任状が必要となり、情報提供があった場合に適用される手続等、以前にはなかった手続が盛り込まれている。

[出典:SD PETOSEVIC]

スイス:行政取消審判導入へ

スイスでは2017年01月01日より連邦知的財産所に不使用取消審判を請求できるようになる。
同審判は何人も請求可能であり、全体のみならず部分取消請求も可能である。
請求にあたっては予め対象商標が使用されていない証拠(prima facie evidence)が必要となるが、調査会社等に依頼したレポートも当該証拠と看做される。

[出典:Isler & Pedrazzini AG]

中国:最初のGUI侵害案件に関する審理

2016年09月21日、GUI意匠侵害に関する最初の案件は北京知的財産法院で審理された。
GUIとは、コンピュータやソフトウェアが利用者に情報を提示したり操作を受け付けたりする方法(UI:ユーザインターフェース)の類型の一つで、情報の提示に画像や図形を多用し、基礎的な操作の大半を画面上の位置の指示により行うことができるような手法である。
原告Qihu360は2014年コンピュータの安全性に関する最適化を目的としたGUIを開発・設計し、これは安全性に関するテスト結果を新しい方法で画面にディスプレイするものであった。このGUIは特許・意匠をはじめ複数の権利を取得した。2015年末、被告Jiangmin Companyは新しい商品について原告のものと非常に類似するGUIを採択した。原告は、被告のこのような使用は原告の権利を侵害し多大な損失をもたらしたと主張した。原告は裁判所に対して、被告の侵害行為の停止と合計1,500万元の損害賠償を求めた。
被告は原告の意匠権に対して無効審判を請求し、当該審理の中断を求めていたが、裁判所はこれを認めず、原告の意匠権は有効であるとし被告の中断要請を却下した。

[出典:MMLC Group]

インドネシア:ピエール・カルダン商標権を失う

ファッションブランド「ピエール・カルダン」がブランド名とロゴの商標権を侵害されたとして、インドネシア人実業家による同ブランド名などの商標登録取消を求めた裁判で、最高裁は2016年09月11日、「知的財産法に基づき、最初に商標登録した者の権利が守られるべきである」として、実業家の主張を認めた一審判決を支持する判決を言い渡した。これでピエール・カルダン側の敗訴が確定する。

東ジャカルタのカユプティに住むアレキサンダー・サトリョ・ウィドウォ(Alexander Satrya Wibowo)氏は1977年07月に「Pierre Cardin by PT Gudang Rejeki」のブランド名とロゴを法務人権省知財権総局に商標登録していた。

これに対し、ピエール・カルダン側は1999年、同局に登録申請したが認められず、2015年になって実業家による商標登録の取消を求める裁判を起こし、一審は敗訴した。
最高裁判決で、マハディ・ソロインダ・ナスティオン裁判長は「(法務人権省知財権総局に登録された)『ピエール・カルダン』は、アレキサンダー氏が経営する会社、製品のブランド名であり、第三者のブランドを模倣しているとは言えない」と結論付けた。
一方、担当判事3人のうち1人は「(ファッションブランドの)『ピエール・カルダン』は世界の多くの国で、原告により商標登録されている。最初に登録したというだけで、アレキサンダー氏の主張を認めることは不当だ」と反対意見を述べた。
インドネシアでは今年2月にもIKEA商標が取り消されたが(2016年03月08日号)、インドネシア当局は概して、商標権の取消に消極的である。同国においてビジネスを展開する可能性が少しでもある場合は、早めに商標登録することをお勧めする。

[出典:じゃかるた新聞]

アメリカ:クリントン氏と知的財産権の関連性

アメリカは11月の大統領選挙に向けていよいよ選挙戦が本格的になっている。
大統領候補の一人、ヒラリー・クリントン氏が弁護士出身であることはよく知られているが、一時期知的財産権も取り扱っていたことはあまり知られていない。
同氏は1977年から1992年までRose Law Firmに在籍し、知財に関わっていた。
当時の同僚は同氏の取扱案件を覚えておらず、あまり裁判所にも出廷していなかったようだが、少なくとも3つの裁判に関して同氏が弁護士として係わっていたことが判明している。
第一のケースは虚偽広告に関するもので、クリントン氏はMaybelline Co.とNoxell Corp.との訴訟でMaybellineの代理人であった。MaybellineはNoxell社の“Cover Girl Clean Lash”というマスカラに関する宣伝について、ウォータープルーフではないにも拘わらずそのような印象を与えると主張し、独自の研究機関が行った検査結果を提出した。訴状はMaybellineの本社があるアルカンサスの裁判所に提出されたが、Noxell Corp.はアルカンサスではビジネスを行っておらず、裁判所は管轄が異なるとし、案件をニューヨークの裁判所に移送し、そこで解決した。

第二のケースは商標権侵害に係るもので、クリントン氏はFirst Nationwide Bank(FNB)対Nationwide SavingsとLoan Associationの訴訟でFNBを代理した。FNBは“Nationwide Savings”という商標について侵害があったと主張し、“Nationwide Savings”というフレーズを財務サービスに使用しないよう差止を求めた。FNBはこのフレーズの使用により消費者がサービスの提供者について混同する虞があり、FNBのグッドウィルと名声から利益を受けようとするものであると主張した。クリントン氏はFNBの代理として裁判所から差止命令を得ることに成功している。

第三のケースも商標権侵害に関するもので、Holsum Baking Co.(HB)vs W.E. Long Co.(Long)の案件で、クリントン氏はHBを代理した。Longはアルカンサスでパン製品に関して商標“Holsum”を登録し、後にHBと3年間特定分野において広告の目的で“Holsum”商標の使用権を付与する契約を結んだ。その後、HBは小麦粉パンを市場に導入し、“Holsum Grains”として販売し、40年以上に渡り商標“Holsum Sunbeam”を使用したが、製品には“Sunbeam”の記載がなかった。LongはHB商品のパッケージ製造業者に連絡し、HBの商品に“Holsum”を付して販売してはならないと警告した。HBは“Holsum”商標を付したパッケージの回復を求め、当事者によって以前の契約は放棄されており、HBは44年以上に渡り“Holsum”商標使用していたことにより、当該商標に関する権利を取得したと主張した。クリントン氏はこの案件において、HBのための救済措置を得ることに成功した。

以上の事件は数少ないとはいえ、少なくともクリントン氏が自身の担当した企業の知的財産権保護に関して成果を上げていると言えよう。アメリカの一部のコメンテーターは、クリントン氏が著作権ポリシーと特許紛争に関する改革に消極的であることを理由に同氏の知的財産権に関する知識が曖昧であると批判しているが、上記のケースが示す限り、同氏が知的財産権に関して経験を有し、一定のポリシーを有していることは明らかである。

[出典:Foley & Lardner LLP]

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