
C市場の拡大とともに、模倣品(偽物・コピー品)による被害は年々深刻化しています。Amazonや楽天市場、メルカリなどのオンラインプラットフォームでは、自社ブランドが無断で模倣されるケースが増え、企業の売上やブランド価値に深刻なダメージを与える事態も少なくありません。
本記事では、模倣品発見時の初動対応から、削除申請、法的手段、予防策まで、知財担当者が押さえておきたい模倣品対策のポイントを分かりやすく解説します。
1.【初動対応】模倣品を見つけたとき、まず何をする?
模倣品を発見した際には、迅速かつ的確な初動対応が重要です。
1-1.初動対応の流れ:証拠保全から通報までのステップ
❖ 証拠保全の方法
最優先すべきは「侵害の証拠を確実に残すこと」です。
ECサイトやSNSの該当ページは、URL、投稿日時、販売者情報が表示されている状態でスクリーンショットを取得し、日付入りで保存しておきましょう。
可能であれば模倣品そのものを実際に購入し、購入時のメールや取引履歴、領収書などの記録もあわせて保存します。商品が到着したら、パッケージ、発送伝票、商品本体などを写真や動画で記録し、物理的な証拠として保管します。
現物の入手が難しい場合は、Webサイト上やカタログ上の模倣品の画像を保存しておきます。国や地域によっては、証拠の信頼性を高めるために、公証人による証拠保全手続きやタイムスタンプサービスの利用が推奨される場合もあります。
【調査時の注意点】
自社のネットワークからアクセスすると、IPアドレスを通じて身元が特定され、侵害者に警戒されて証拠隠滅や販売停止をされる可能性があります。調査専用の独立した端末・モバイル回線を使用するなどの対策を取りましょう。
❖ 侵害状況の把握
証拠を確保したあとは、インターネット検索や取引先へのヒアリングを通じて、模倣品の販売規模や流通範囲を確認します。Amazon、楽天市場、メルカリなど日本国内のプラットフォームだけでなく、AlibabaやeBayなど海外ECサイトも含めて調査しましょう。また、SNSでの宣伝活動の有無もチェックが必要です。
製造元や販売ルートの特定が困難な場合は、専門機関への調査依頼がおすすめです。たとえばマークアイの「模倣品・侵害品対応支援サービス」では、こうした市場調査・会社調査をワンストップで支援しています。
❖ 対応方針の決定
収集した証拠と侵害状況をもとに、どの知的財産権(商標権、意匠権、著作権など)が侵害されているかを明確にしたうえで、対応方針を決定します。使用中止の要請のみで済ませるか、損害賠償請求まで行うかを慎重に判断しましょう。
また、侵害者が海外に所在している場合には、現地の専門家からリーガルオピニオン(法的見解)を取得することも検討しましょう。
1-2.主要プラットフォームでの掲載削除申請の方法
大手ECプラットフォームでは、知的財産権侵害に対応するための専用窓口が用意されています。サービスごとに名称・導線は異なるため、各社ヘルプの「知的財産権」「権利侵害」「侵害申告」等から辿るのが確実です。
※以下は2026年1月時点の情報をもとに作成しています。手続方法や名称は変更される場合があります。た、侵害者が海外に所在している場合には、現地の専門家からリーガルオピニオン(法的見解)を取得することも検討しましょう。
❖ Amazon
権利者(または代理人)が「Report Infringement(権利侵害の報告フォーム)」から、商標・著作権などの侵害を申告できます。すでにAmazonのBrand Registryを利用している場合、ブランド保護ツール(例:違反報告系ツール)を通じて、より効率的に報告・管理できるケースがあります。
❖ 楽天市場
「権利者侵害通知窓口」(権利侵害通知のフォーム)から申告します。申告フォーム内で、対象URL、侵害されている権利、侵害理由等を記載し、必要資料を添付します。
❖ Yahoo!ショッピング
権利者向けの窓口として「知的財産権侵害の申立窓口」が用意されています。申立書の添付や本人確認/権利証明資料の提出が求められます。
❖ eBay
知財侵害の申告をVeRO(Verified Rights Owner)プログラムで扱い、権利者はNOCI(Notice of Claimed Infringement)提出等で申告します。
❖ Yahoo!ショッピング
「知的財産権侵害申告フォーム」から、侵害内容を具体的に記載し申請します。権利を証明する書類とともに提出が必要です。
❖ Alibaba
IPP(Intellectual Property Protection Platform)を通じて、本人確認と権利書類の確認後、疑わしい掲載への削除申立を提出できる仕組みを案内しています。
【申請時の注意点】
削除申請は、冷静かつ客観的な説明と、正当な権利を示す証拠資料の提出がポイントです。感情的・一方的な主張にならないよう注意してください。
また、削除申請はあくまで応急措置です。販売者が別のアカウントで再出品するケースもあるため、根本的な対策としては、水際対策(税関申請)や法的措置との併用が望ましいといえます。
なお、模倣業者への直接連絡は、証拠の隠滅や逆告訴のリスクがあるため、弁護士や専門機関を通じての交渉が安全です。
2.模倣品対策に使える法的手段
模倣品への対抗手段として、自社が保有する知的財産権を活用した法的措置が有効です。
2-1.どの権利で守る?商標権・意匠権・著作権・特許権の使い分け
侵害されている対象(ブランド名、製品デザイン、パッケージ、技術内容など)に応じて、行使すべき権利が異なります。
❖ ブランド名やロゴが模倣されている場合→商標権
商標権は、ブランド名やロゴなどの識別標識を保護する権利です。特許庁に商標登録しておくことで、同一または類似の商標を無断で使用されることを防げます。
たとえば、自社ブランド「ABC」で販売している化粧品と同じ名称で、第三者が化粧品を販売している場合、商標権侵害として差止請求や損害賠償請求が可能です。
日本では登録から10年間が存続期間で、更新手続により継続が可能です。一方海外では、審査なしに登録される国(無審査主義)もあり、権利行使前に評価書(サーチレポート)を取得しておくと確実です。
商標権の侵害については以下の記事で詳しく解説しています。
商標侵害(商標権侵害)対策ガイド ─侵害時の対処や警告への対応・予防策─
❖ 製品デザインが模倣されている場合→意匠権
意匠権は、製品のデザイン(形状、模様、色彩)を保護します。家具、家電、アクセサリーなど、デザインが商品価値の重要な要素となる製品で有効です。
たとえば、A社が販売している独創的なデザインの椅子をそっくりそのまま模倣した製品が販売されている場合、意匠権侵害として対応できます。
日本では最長25年間保護されますが、国ごとに期間は異なります。また、一部の国では無審査主義を採用しており、権利行使にあたって評価書の取り寄せなどが必要になる場合があります。
❖ パッケージやWebサイトのデザインが模倣されている場合→著作権
著作権は、文章、イラスト、写真、プログラムなど創作性のある表現物を保護する権利です。日本では創作時点で自動的に発生しますが、登録制度がある国もあります。また、有効期限も国ごとに異なります。
商品パッケージのイラストやWebサイトのデザインが無断コピーされた場合などが著作権侵害に該当します。
❖ 特許やアイデアが盗用されている場合→特許権
特許権は新しい技術やアイデア(発明)を保護します。機能や構造が真似された場合、特許権による差止めや損害賠償請求が可能です。
❖ 商標や意匠が未登録の場合→不正競争防止法
商標権や意匠権がなくても、不正競争防止法の“商品形態模倣”として差止等を検討できる場合があります。
たとえば、パッケージを含む商品形態を模倣された場合、発売から3年以内のデッドコピーであれば差止請求が可能です。また、周知性のある商標や商品形態については、登録がなくても保護される場合があります。
2-2.海外からの模倣品を水際で止める:輸入差止申立制度
海外で製造され日本に輸入される模倣品には、税関での水際対策が有効です。
❖ 輸入差止申立制度とは
知的財産権を侵害している、あるいは侵害する可能性のある物品について、あらかじめ税関に対し輸入差止めと認定手続の実施を申し立てる制度です。
申立書には、下記の内容を明記します。
● 権利内容
● 侵害品の特徴
● 真正品との見分け方
● 模倣品の特徴・販売形態 など
税関が侵害の疑いがある貨物(疑義貨物)を発見すると、輸入者と権利者の双方に通知され、意見陳述と証拠提出の機会が与えられます。最終的に侵害品と認定された場合、輸入は認められず、輸入者による自発的処理(廃棄・任意放棄・積戻しなど)または没収・廃棄といった措置が取られます。
❖ 輸入差止申立制度を活用するメリット
模倣品が国内市場に流入する前に阻止できるため、ブランドイメージの毀損や売上への影響を最小限に抑えられます。
また、輸入差止申立制度を利用していることを自社Webサイトなどで告知することで、抑止効果も期待できます。
❖ 輸入差止申立制度の注意点
一般論として、特許は技術的判断が必要になりやすい一方、商標・意匠は外観比較が中心になりやすく、水際手続で扱いやすい傾向にあります。ただし、すでに国内に流入している模倣品や、国内で製造される模倣品には対応できないため、プラットフォームへの削除申請や法的措置と組み合わせることが重要です。
また、国によっては、中国のように申立てにあたって担保金(保証金)の預託が必要な場合もあります。
2-3.差止請求・損害賠償、裁判を起こすべきケースとは
削除申請・警告で止まらない、または被害拡大のおそれがある場合、仮処分(差止の暫定措置)や訴訟を検討しましょう。
❖ 差止請求
差止請求は、侵害行為の停止や予防を目的とした請求です。差止に加えて、侵害品の廃棄や、侵害行為に供した設備の除却なども請求できます。
また、緊急性が高い場合は仮処分を申し立てることで、本訴前に一時的に侵害行為を止めることも可能です。
❖ 損害賠償請求
侵害により自社が被った損害については、損害賠償請求が可能です。以下のような算定方法が使われます。
● 侵害者が得た利益を、自社の損害とみなす方式
● 通常のライセンス料相当額を損害とみなす方式
訴訟時には、損害の立証資料を整備しておくことが重要です。
❖ 刑事告訴
悪質な商標権侵害は、刑事罰の対象となります。日本の商標法に基づく法定刑は以下のとおりです
● 個人:10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(または併科)
● 法人:3億円以下の罰金
海外では刑罰が異なるため、現地の法制度を確認し、現地弁護士と連携することが不可欠です。
❖ 裁判を検討すべきケース
以下のようなケースでは、訴訟を検討すべきです。
● 削除申請や警告書を送付しても、侵害行為が継続している
● 侵害の規模が大きく、ブランドや売り上げへの影響が深刻
● 悪質な侵害者で、損害賠償を求める必要がある
● 見せしめとして、法的措置を取る姿勢を業界に示したい
ただし、裁判には時間とコストがかかるため、事前に専門家と綿密な戦略を立てることが重要です。
また、海外の侵害者を相手にする場合は、現地の法制度や手続きに従う必要があるため、現地の弁護士との連携が不可欠です。
3.模倣品を未然に防ぐには?効果的な予防策
事前に適切な対策を行うことで、模倣品の被害を最小限に抑えることが可能です。
3-1.商標権・意匠権・著作権で権利を確保する
まずは「守るべき対象」に合わせて、必要な知的財産権をしっかり取得しておくことが基本です。
❖ 事前調査の徹底
新しい商品名やロゴ、デザインを使用する前に、まずは下記のような無料のデータベースを活用し既存の商標・意匠との抵触がないかを調査しましょう。
● J-PlatPat(特許情報プラットフォーム):日本の特許庁が提供する商標検索サービス
● WIPO Global Brand Database:世界知的所有権機関(WIPO)が提供する国際商標検索サービス
● 各国商標データベース一覧:マークアイが提供する主要国のデータベース
加えて、Google検索、主要ECモールやSNS(Instagram、Facebook、X)といったオンライン媒体でも調査が必要です。未登録でも、他者が継続使用し周知されている場合などは、「先使用権」が問題になる可能性があります。
❖ 商標登録と更新管理
事前調査で問題がなければ、できるだけ早期に商標出願・登録を行います。商標権は基本的に「早い者勝ち」の制度です。
日本においては、商標権の存続期間は登録日から10年間で、所定の手続きを行えば10年ごとに何度でも更新可能です。有効期間満了後も、6か月以内であれば追納によって更新が認められます。
また、日本国内で3年以上使用していない登録商標は、第三者から「不使用取消審判」を請求されるリスクがあります。これを回避するためには、商標の使用実績を日頃から記録・保管しておくことが重要です。
商標管理については、以下の記事で解説しています。
商標管理とは?台帳整備から更新・ツール選定まで分かりやすく解説
❖ 事前調査の徹底
海外で商品・サービスを展開する場合は、日本での登録だけでは不十分です。商標権は各国ごとに登録を行いましょう。
特に注意するべき点は以下の3つです。
● 中国では冒認出願(第三者による無断出願)が非常に多いため、進出前に必ず商標権確保を行う
● デザイン重視の商品では、意匠権の海外取得も検討する
● 著作権に関しては、登録制度がある国もあるため、登録により訴訟対応が容易になる場合がある
海外展開の際は、現地の法制度の確認と早めの準備が重要です
3-2.Webサイトでの注意喚起と正規品識別マークの活用
企業の公式サイトで「正規販売チャネル」「模倣品の注意喚起」を明示しておくことも有効です。
また、以下のような真贋判定をサポートする仕組みを導入する企業も増えています。
● シリアル番号
● ホログラムラベル
● QRコードによる製品認証
4.模倣品による被害の実態:放置するとないか起きる?
模倣品は「直接的な売上の喪失」だけでなく、さまざまな悪影響を及ぼすリスクがあります。
4-1.国内外の被害状況
模倣品・海賊版の流通は世界規模で問題となっており、国際機関の推計では、2019年時点の国際貿易における模倣品・海賊版の流通額は最大で4,640億米ドル(世界貿易の約2.5%)とされています。
日本企業に関しては、2017年度の日本の模倣品被害社数(全体推計)は11,643社で、これは「日本の産業財産権登録企業」のうち7.0%に相当するとされています。
また近年は、ECの拡大とともに、オンラインプラットフォームが悪用される新たなトレンドが指摘されています。
参考:
GLOBAL TRADE IN FAKES A WORRYING THREAT EXECUTIVE SUMMARY
模倣品対策とSDGs~模倣品の撲滅でSDGsの達成に貢献~令和元年8月経済産業省製造産業局模倣品対策室
4-2.模倣品を放置するリスク
模倣品を放置すると、以下のような被害が拡大していきます。
● 正規品の売上・利益の毀損
● ブランド価値の低下
● 消費者の安全・健康リスク
● 調査・削除申請・問い合わせ対応といった対策コストの増加
特に「正規品と誤認される」状況が起きると、事故・不具合の真因が模倣品にあったとしても、正規メーカー側がクレーム対応や信用回復対応を迫られるなど、実務上の負担が増える可能性があります。
そのため、早期の発見と初動対応に加え、予防策との組み合わせで被害とコストの両方を最小化していくことが重要です。
まとめ
模倣品対策は、「発見→削除→予防」の基本サイクルを継続的に回すことが重要です。証拠を確実に保全し、プラットフォームへの削除申請や専門家への相談を優先しましょう。
また、商標権や意匠権などの知的財産権を取得し、税関での水際対策を整えることで、模倣品被害を未然に防ぐことが可能です。
株式会社マークアイでは、1,800社以上の取引実績をもとに、模倣品・侵害品対応を包括的に支援しています。商標調査による事前リスク回避から、侵害発見時の対応アドバイスまで、企業の状況に応じた最適なソリューションを提供しています。
模倣品・侵害品対応支援の詳細は、下記をご覧ください。
模倣品・侵害品対応支援サービス
- 商標とは?(商標の役割・機能・重要性)
- 商標調査について
- 商標出願の流れ
- 出願ルートの選択
- 出願時の注意点
- 提出書類の認証手続き
- コンセント制度の仕組みと手続き、活用方法
- 出願から登録までの各国における所要期間
- 使用を要件とする商標権維持手続き(更新/使用宣誓等)が必要な国
- 商標管理とは?台帳整備から更新・ツール選定まで分かりやすく解説
- 商標の希釈化を防ぐには
- アジアにおける商号と商標権との関係
- 商標トラブルを防ぐには?事例と対策を解説
- 商標侵害(商標権侵害)対策ガイド─侵害時の対処や警告への対応・予防策─
- 商標権侵害とは?成立要件と判断基準をわかりやすく解説
- ブランド毀損のリスクと事例|企業が実践すべき対策を解決
- 各国商標データベース一覧