商標の豆知識ブランド保護の豆知識タイ税関登録による模倣品対策とは?
自動車部品メーカーが知るべき水際対策

2026.05.19

タイは東南アジアの自動車産業のハブとして重要な位置を占めており、自動車部品市場とアフターマーケットが大きいことから、模倣品対策の優先度が高い国の一つです。
同市場における模倣品・偽造品の流通は、単なる経済的損失にとどまらず、ブランドの信頼性、消費者の安全、さらには知的財産保護の観点からも重大なリスクとなります。
本記事では、タイ税関登録(Customs Recordation)および税関差止の実務動向を踏まえつつ、なぜ自動車部品メーカーにとってタイが投資対効果の高い模倣品対策先であるのかを解説します。

1.タイが自動車部品の模倣品対策で重要な市場である理由

タイは「東洋のデトロイト」と称される通り、ASEAN最大級の自動車生産・販売拠点であり、自動車部品の模倣品対策を検討するうえで極めて重要な市場です。

圧倒的な市場規模
タイはASEAN有数の自動車生産国であり、日本車のシェアも依然として高水準です。
この市場規模の大きさは、自動車部品の真正品需要だけでなく、模倣品・偽造品が流通しやすい環境にもつながります。

サプライチェーンの要
生産拠点であると同時に、補修用部品を含む大規模なアフターマーケットが形成されており、商標権を侵害する模倣品が入り込みやすい土壌があります。

模倣品のハブ化
市場規模の大きさに比例して、周辺国への流入・流出の経由地となるリスクも高く、タイで税関差止や水際対策を強化することは、東南アジア全域での模倣品拡散防止にもつながります。

2.自動車部品の模倣品・偽造品がもたらす安全リスクとブランド毀損

自動車部品の模倣品・偽造品は、一般消費財とは比較にならないほど深刻な安全性リスクとブランド毀損リスクを伴います。

生命・安全への直接的な脅威
ブレーキパッド、エアバッグ、ステアリング部品などの模倣品自動車部品は、性能不足や品質不良により重大な事故を招くおそれがあり、消費者保護の観点からも見過ごせません。

PL(製造物責任)リスク
模倣品による事故であっても、ブランドロゴや商標が付されていることで、真正品メーカーが風評被害や法的対応に巻き込まれる可能性があります。
模倣品対策は、PLリスク管理の観点からも重要です。

風評被害・信頼失墜リスク
消費者が真正品と誤認して購入した結果、品質不良や事故が発生した際には真正品メーカーが風評被害を受け、「日本車=安全」という長年築いてきたブランドへの信頼が損なわれるリスクがあります。
こうしたブランド毀損を防ぐには、流通段階での摘発に加え、税関登録を活用した水際での模倣品排除が不可欠です。

3.タイ税関登録(Customs Recordation)のメリット|模倣品対策に有効な2つの理由

タイの知的財産保護体制は近年進展しており、タイ税関登録(Customs Recordation)を活用することで、商標権に基づく税関差止や模倣品対策を比較的実務的に進めやすい環境が整っています。

3-1.タイ税関の差止・摘発実績が高く、模倣品対策として機能している

タイ税関およびタイ知的財産局(DIP: Department of Intellectual Property)は、権利者との連携を強化しており、真正品情報や模倣品識別情報を活用した差止運用の実効性が高まっています。

官民連携
2022年の税関通達を受けた権限強化と、Thai Customs IPR Recordation System(TCIRs)の運用により、権利者が登録した商標権情報、真正品情報、識別資料を税関実務に反映しやすくなっています。
これにより、税関職員の鑑定精度向上と模倣品摘発の実効性向上が期待できます。

摘発実績
近時、弊社へ届く同国での自動車部品の差止通知件数は増加傾向にあり、税関が「現場で機能している」数少ない国の一つです。
港湾だけでなく空港や市場も含めた監視強化が進んでいるものと思われます。

3-2.差止から廃棄まで、実効性とコスト効率を両立した制度

タイの税関差止制度は、権利者にとって比較的使いやすく、模倣品対策の費用対効果を考えるうえでも有力な選択肢です。

簡素な手続き
輸出入者(侵害疑い者)が異議を申し立てない場合、裁判を経ずに税関の権限で廃棄まで進められるケースが多く、税関差止後の実務フローが比較的明確です。

低コストかつ短期間
担保金の支払いが不要である点や、長期にわたる裁判や保管費用負担のリスクが比較的抑えられる点は、商標権者にとって大きなメリットです。

侵害品の廃棄を毎年実施
知的財産当局や政府関係者が関与する廃棄実施の運用が継続しており、差止後の侵害品処分まで見据えた模倣品対策を設計しやすい点も特徴です。

4.タイ税関登録と模倣品対策の実務ステップ

タイで実効性ある模倣品対策と知的財産保護を進めるため、以下の実務ステップを推奨します。

1.タイ税関登録の実施
商標権に基づき、税関登録・更新を速やかに行う。

2.識別情報の提供
税関職員が真正品と模倣品を見分けられるよう、ホログラム、梱包の特徴、ラベル、二次元コードなどの判定ポイントを共有する。

3.定期的なトレーニング
税関職員向けに、真正品と模倣品の識別セミナーや自動車部品の判別トレーニングを継続的に実施する。

まとめ|タイ税関登録を活用した模倣品対策で自動車部品市場を守る

タイは、模倣品が「入りやすく、出やすい」場所から、「捕まりやすく、廃棄されやすい」場所へと変化しています。
特に自動車部品メーカーにとって、タイ税関登録は単なる法務手続きではなく、商標権に基づく税関差止、知的財産保護、ブランド価値の維持、そして顧客の安全確保を支える戦略的な模倣品対策です。

マークアイでは、各国における税関登録や模倣品対策に関する支援を行っています。
状況に応じた対応をご検討される際の一助として、ご活用ください。
各国における税関登録制度
模倣品・侵害品対応支援サービス

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注記: 本記事の内容は2026年現在の実務情報に基づいています。
最新の法令改正については、現地の知財専門家への確認を推奨します。